40年程前。私が東海大学落語研究部の学生だった頃。クラブでは小田急線の小田急相模原駅に住まないとダメ部員の烙印を押されるという、不思議な伝統があった(ネット書籍「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語~」に記されている)。過去の有力な部員、「面白かった先輩」「落語が上手かった先輩」「人望がある先輩」は皆、この街に住んでいたからだ。
大学のある最寄り駅は小田急線の大根駅(おおねえき)現在東海大学前駅。一年生の時は、この駅周辺に下宿する人が多い。実際、私も大学から歩いてすぐの物件に住んでいた。
ところが、先輩の言葉「相模原に住まないと落語上手くならねーぞ!」に真面目な私は反応してしまった。「上手く成れるなら引っ越さねば…」
小田急相模原駅は大学最寄りの大根から電車で30分ぐらいかかる。学生にとって引越しは大仕事だ。二年の秋。同期の三人で同時に引っ越すことになった。出費をおさえる為に、三人でレンタカーの大きなトラックを借りて一辺に引っ越したのだ。
つまり、引越しは「困難を極める」。つまり、三人の荷物を一日に運ぶのだ。三人で三軒の引越しのアルバイトをするのと同じ仕事量となる。頭の回る奴らなら、後輩に手伝いを頼むのだが「俺たち荷物たいしてないから…」と簡単に決行してしまった。引越しの後後輩に奢る飲み代の伝統を節約したのかもしれない(真実は思い出せない)。
何とか苦労して一日で引越しを終え、レンタカーを延長なしで返すことに成功したが、体はヘトヘト。三人で飲みに行くことすらなかった。
急いで部屋に荷物だけ入れたので、レイアウトはメチャクチャ。ダンボールだらけの倉庫の様な部屋で暫く暮らしていた。
すると、ある夜…隣の部屋から女性の声が聞こえて来た。「これ、持って来なよ!」「えっ!」「隣、大学生なんでしょ?チョット格好いいんでしょ!持ってきなよ!」「ええ~!」「いけいけ~!」
隣には20代と思われるOLが住んでいた女子友達が遊びに来たのだろう。しかも、隣の大学生は「私だ!」。
コンコン!ドアがノックされた。あわてて出ると…。「あのー!これ、おすそ分けです」。見ると切ったメロンである。「ありがとうございます」。
そして、また隣から声が聞こえた「わー!どうだった?」「どうって…」「このこの…」
どうみても、OLは私に好意を持っている。
私は後日。自分の出る落語会のチケットを「そうだ!隣のOLに渡そう」と思いついた。友達が居ないのでノルマが余っていたのだ(会場費は演者で割って負担)。
コンコン!「はーい!」「すいません、隣の学生ですが…。時間があったら落語会に来て頂けませんか?チケット差し上げます」。私はチケットを二枚差し出した。「あのー!私、行かないんで!」(心の声)「あれれ…数カ月前と反応と違うな…」ガチャ!
ドアは閉じられた。
数日後。OLは引っ越して行った。私は思った。「あの時のメロンは何だったんだ?」…。本当に単なるおすそ分けだった様だ…。
ちなみに、引っ越しても落語が上手くなった実感は無かった…。また、騙されたのかもしれない…。でも、毎日が面白かった…。じゃあ、正解としよう…。
隣のOLは、今、60才ぐらいだろうか?「このOLは私だ!」と言う方は、是非読んで欲しい。「友達のOLは私だ!」と言う人もお願いします。
そして、一緒に引っ越した、同期・切笑、我裸門は絶対に読まないだろう。
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「嗚呼!青春の大根梁山泊~放送業界編~」も出てます。
直木賞には程遠い、青春エッセイを皆様に…
安いです。上→200円。中→300円。下→300円。
「放送業界編」800円(高そうに見えますが、上中下に分けていないので、枚数と値段は同等です)
「青春落語バカの楽しいエピソード」有名劇団の主催者や脚本家、演出家絶賛!
社会人落語の大御所・若木家元翁(元治ー)さん(国学院OB)も読んだかどうかは分からない名作エッセイ!
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