四十年程前。放送作家の師匠・Mが突然言った。「お前ら全員に腕時計をやる」。私はなんのことか分からなかった。また、何か騙すのかと思っていた。
警戒したのか後輩の作家・Sは「僕はいりません」と譲らない。機嫌を悪くしたMは「じゃあ、やらない!」一番年上のОに「お前には、オメガをやる」。裸で渡したオメガはアポロ計画の時計に近いデザインだった。私が「あれ?けっこう高いのでは?」と思っていると…。
小林には「これだ!ロレックスだぞ!」「ええ〜!ロレックスー?!」私はバッタもの「ロタックス」を疑ったが。ちゃんと「ロレックス」と書かれている。
「ボーイズタイプのデイト無しだから、二十代のお前がしていても嫌味がないぞ!お前、いいの貰ったな〜!みんなに自慢しろ!」
そんな馬鹿な!当時、所属作家のギャラ未納でもめていた事務所での出来事。これは確かにワナかもしれない。
オメガを貰ったOさんはすぐ「事務所を辞めた」未納は最小限だ。私は解散まで居て数百万の未納ギャラが貰えなくなった。
今、思うとM師匠は「もう、未納ギャラ払えないから、せめて時計で勘弁しろ!」と言うことだった様だ。
あれから、四十年以上たった。あのロレックスは、落語家の真打パーティーなどで使っていたが、普段は使用していなかった。ゼンマイがダメになり、日に一分遅れる。
しかし、この時計は本物なのか?以前、ロレックス全集を見たら「ほとんど同じものはあるが…針の形が違っている」。偽物の可能性もあるということだ。
先日。ついに売ることにした。東京の某有名店で買い取り査定をすると…。1950年代のボーイズで本物だという。しかし、文字盤が塗りなおしてあるそうだ。針は別の物と取り換えられている。ベルトの金属が腐ってそろそろ切れそうなのだそうだ。
それでも査定価格は十万円。AIに聞いたら、買取相場では一番高い査定だという。独自に修理できる会社だからだそうだ。普通の店だと8万でれば良い方らしい。
このボーイズタイプ。ネットで15万前後で売られているので自社修理でないと儲けが出ない価格だ。さすがは有名店。街の質屋に行かないで良かった。
と思うが…。AI込みで騙されているかもしれない?実はこの店はAIが勧めたところなのだ。タダで貰ったんだから十分だが…。
ギャラ未納を踏まえると…。数百万が十万になったとも言える…。大暴落の株みたいなもんだ!
高校の時買ったセイコーの腕時計しかなかった二十歳の頃のお話…
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直木賞には程遠い、青春エッセイを皆様に…
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