放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

合気道の塩田剛三、柔道の三船久蔵・十段。そして、三輪先生!

 合気道の達人・塩田剛三さんの技をユーチューブで見たことのある方も多いと思う。踊る様に素早く動き、痩せたお爺さんなのに屈強な男達を、いとも簡単に投げ捨てる。その足の動きはリズミカルで、まるで踊りの様だ。

 

 これに近い感覚は、柔道の三船久蔵・十段の映像にも見られる。三船・十段は、足をつかわずに相手を投げる「空気投げ」で有名なレジェンドだ。

 この三船・十段も痩せたお爺ちゃんだが、踊るような早い動きで、涼しい顔をして相手を投げ倒す。その動きは塩田剛三と似ている。

 

 現代の格闘技では「パワーが無いと技は通用しない」との考えが主流だ。中には、あの映像は「パフォーマンスとして、若い選手がわざと投げられている」と言う人も居る。

 確かに、残された映像は最晩年のものなので「ショー的」な要素はあるかも知れないが…。私は、本当に強いと感じる。

 

 私は中学時代、柔道部で初段を取った。まあまあの選手だった筈だ。実は、私は中学時代、塩田さんや三船さんの映像と似た感覚を憶えたことがある。

 

 隣町の浜松商業の柔道場で、地域の中学生が参加できる「柔道教室」が開かれた。日曜開催なので、我が中学(磐田市立城山中学)からも何人かが参加していた。

 

 三人程の超有段者、五段、六段、といったお爺ちゃんが中高生相手に教えてくれるのだが、乱取りと呼ばれる試合形式の練習で相手をしてくれたお爺ちゃん先生がいた。この日の先生の中でもひと際お爺ちゃんで、七十は超えていたと思う。

 確か、三輪・六段と呼ばれていたと思う。痩せこけたお爺ちゃんで、本気で投げたら骨が折れそうだ。

 

 私は、この三輪先生と組んだ時驚いた!フワフワしている。引っ張ると、そのままついてくる。でも、投げられない。「あれ!何でだ?」パワーも強さも何も感じない。投げたつもりでいても、いつの間にか、私の横や正面に移動しているのだ。中を舞う幽霊の様だ。

 私が驚いていると、三輪先生は「太ももで私の腰を押し上げて」ふっと力を抜く。気づくともう投げられている。何が起ったか分からない。しかも、力で引かれた感じはしない。一瞬で持ち上げられて落とされただけだ。なのに、一本とられている。

 力は入っていないのに一瞬の動きだけ恐ろしく早いのだ。

 今まで見たことのない技だった。「張り腰」と言っていたが、私の持っている柔道の本には載っていない技だ。田舎の中学では絶対やらない技だ。

 

 私は塩田剛三先生、三船久蔵先生、の映像を見た時。「あのお爺ちゃんに似ている」と思った。

 

 三船さんはVTRの中で、「球体が最強」と教えている。重心が常に体の中心にあれば、決して転ばない!球になれ!」と言うのだ。まるで漫画の世界だ。でも、真顔でボールを使って説明している。でも、それは本当だと思う。

 

 まさに、三輪お爺ちゃん先生の動きが、それだった。今のオリンピック柔道では絶対見られない究極の「柔よく剛を制す」である。

 極めると力は入れなくても勝てるのだ。

 

 私と一緒にこの教室に参加した、部長の海野君(うちで一番強い選手)も私と同じことを言った。「ふわふわしてて力が伝わらない!こんな、強い人見たことないよ」。

 

 私は落語の名人の様だと思った。声は張らないのに、いつの間にかひきつけられて、気づけば噺の中に自分が入り込んでいる。「笑わす」のではなく「相手が必然的に笑ってしまう」のだ。

 

 格闘技も芸も極めると、自然体になるのかもしれない。

 

 

 

 

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