放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

「ふぞろいの林檎たち」の思い出…山田太一さん…追悼

 大学4年生のある日。夜、風呂なしアパートに帰り、テレビをつけた。すると、いきなり林檎を持つ手のアップ。「愛しのエリー」が流れた。

 私は「あっ!サザンのコンサートを放送するのか?」と思い画面にくぎ付けになった。しばらく見ると…。「あれ!ドラマだ!」

 チョットガッカリしたが、そのまま見ていると…。三流大学4年生のドラマである。私と同期生だ。大学の環境も似ている。

 食い入るように見てしまった。落研の私とはまったくかけ離れたナンパ系の一般サークルを立ち上げる青春ドラマだ。

 偶然、一回目を見た私だが…。毎週、欠かさず見る大ファンになっていた。

 

 ドラマでは、時任三郎が警備員のバイト中に自殺を助ける。それが、その企業のお偉いさんで、コネで超一流企業に内定してしまうのだ。

 私は大学時代バイトをしていないが、ドラマに憧れて警備員をやってみた。すると…。ドラマの様なビルの警備は社員がやるものでバイトはシフトに入らない。私は徹夜の工事現場ばかりだ。しかも、交通を止めると暴走族が「てめえ!殺すぞ!」と叫んでくる。私が光る棒(名前は知らない)で止めると、パイクは突っ込んできて棒を跳ね飛ばして宙に浮いた。それでも、止めて殴られるより走り去ってくれた方がありがたい。なんとか殴られずに済んだ。

 その時「山田太一さんの嘘つき~!バイトでビルの警備なんてないじゃねーか!」という心の声が聞こえた。これは、落語の枕でやってみたが、ウケが良い。さらに、警備で使うトランシーバーのネタに入ると、これが良くウケて嬉しかった。

 山田太一さんのお陰である。

 

 ちなみに、山田さんの別のドラマ「男たちの旅路」は警備員のお話。私は中学生だったと思うが、高校生の兄貴が見ていたので一緒に全話見た。桃井かおりさんを初めて見たのがこのドラマだ。主演の鶴田浩二さんは私の田舎・磐田市の隣、浜松出身。森田健作、水谷豊、といった若手の大スターが出ていたのも新鮮だった。

 

 後に桑田佳祐さんがラジオで言っていたのを聞いたが…。何と!桑田さんは「ふぞろいの林檎たち」のBGMでサザンの曲を使うことを知らされていなかったそうだ。私と同じように、偶然、ドラマを見て「あれ!」と思ったそうだ。

 

 そして、ドラマ「岸辺のアルバム」で家が流されるのは世田谷区狛江市の多摩川沿い。私の住む生田とは自転車で行ける距離だ。

 

 先生…ご冥福をお祈りいたします。