40年前東海大学落語研究部の部員だった私は、なかなかウケない日々が続いていた。口調はそんなに悪くなかったと思うが…。立て板に水で話せるタイプではない。かといって安定感もない。普通の学生が普通に話しても、お客さんは今一つ聞いてくれないのだ。
そんなある日。先輩のスーパースター・切奴さんが、わざと言葉をたどたどしくしてお客の注目を引いている様に思えた瞬間があった。
私は藁にもすがる思いでマネしてみた。
例えば、落語の枕で工事の警備員のバイトで使ったトランシーバーを説明する時。普通なら「バイトで使うトランシーバーがあるんですが…」と話すところを…。わざと思い出しながら話すダメな奴を演じて「あの…なんですか?親指で押して話す無線みたいなやつ…。分かるでしょう?あっ、そう、トラン…トランシーバー。あれ、バイトで使うんですよ!」
この言い方で、たどたどしくすると人間性が出て、お客さんが乗り出して聞いてくれるのだ。それまで、私は上手い落語家さんをマネしてよどみなく話そうとしていたので、ただ音だけが流れていたのだ。
本当にプロの様に流暢なら、それも、ウケるのだが…。ダメな奴にはダメな奴のやり方があるのだ。野村野球の「弱者の理論」を見た時。私は大きく納得したものだ。出来ないことをやるより、出来ることでベストを出す。これしか、勝つ方法はないのである。
ちなみに、このトランシーバーの枕は、落ちがよく出来ているので、内容は内緒です。誰かに使われると困るので…(じゃあ書くなよ!)。
心地よい揺らぎ、心地よいヘタさは興味を引く様だ。漫画で言うとヘタウマの魅力みたいなものなのだろうか?
私が本格派を捨てた瞬間だった。
私は今も、自分には書けないことは断ることにしている。だから、ドラマが来たら断る(誰も依頼しないが…)。ドキュメントならやるが…(これも依頼されたことがない)。みんな、依頼していいんだよ!普通のギャラでけっこういい仕事するんだから…。各局のラジオだって「新番組依頼していいんだよ!」。Dの滝沢君!Dの吉岡~!読んでるかな?読んでねーな!きっと!
忙しすぎる大先生に頼むとギャラばかり高くて手抜きの仕事をするから気を付けろよ!(弱者のプロモーションでした)。
三谷幸喜と会ったことも無い同じ歳の私の青春記は、「弱者の理論」が満載です。高校野球の指導者にも是非読んで欲しい。甲子園の近道があるかも知れない?(あくまで個人の感想です)。
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直木賞には程遠い、青春エッセイを皆様に…
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