放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

幼稚園の時書いた「黒い花」

 私の記憶には無いが、母親が言うには「あんたは、幼稚園の時に黒い花を書いて、保母さんから電話があったのよ!心に問題があるから黒い花を書いたのでは?って言うから、驚いたわよ!」

 

 確かに心理学的にそんな話を聞いたことはあるが…。私は幼稚園で絵を書けと言われて「色を変えるのが面倒」で、黒で全部を書いたのだと思う。

 絵は嫌いだし、ヘタだし、退屈だから適当に書いていたのだと思う。しかも、水墨画のことを思えば、黒で花を書いても良い筈だ。

 

 そんなことを忘れていた、中学生の時。美術の宿題で風景画を「一色」の「濃淡」だけで書くと言う課題が出た。

 私は古い町並みの路地を好きな色「緑一色」で書き上げた。この出来が良く、私としては過去最高の傑作だった。「濃淡」だけで表現すると、白黒写真の様な味がでるのだ。

 

 この絵を机の上で乾かして、テレビを見ていると…。私の部屋から母親の悲鳴が聞こえた!「ひゃ~!」

 「どうした?」私が訪ねると…。「あんた、この絵…気がふれてる…」「いや、違うよ!」「何で街が緑なのよ!そう言えば、幼稚園の時も黒い花を書いてた!」「あのね~!これは、全部を同じ色で書くっていう課題なんだよ!」「そんな宿題あるわけない…ああああ~!この子、おかしいんだ~!」(心の声)「おかしいのは、あんただ!」

 

 同じ中学生の時。こんなこともあった。私が宿題の縦笛(アルト笛)で「メヌエット」という曲を練習していると…。兄貴が言った「お前、時々…タンギングが出来てないぞ!」。タンギングとは舌で音を切る技法だが…。私は途中でタンギングをしないスタカートを入れていた。これは、楽譜通りの正しい奏法である。

 私が兄にそれを説明すると…「そんな奏法はない!」と譲らない。この時、思った、兄は母と発想が似ている。自分しか信じないところも似ている。

 

 もう、説明が面倒なので無視して練習していると…。まだ兄は「違うのになー!」と言ってる。

 

 翌日。音楽の試験で私は練習した通りのスタカート入りで「メヌエット」を披露した。

 すると、音楽の水谷先生が「今日は、私は感動しています。私の教師生活で初めて、笛で百点を付けた生徒がいます」先生は涙目で感動している。

 クラスの全員は、音楽が一番得意な女子・水谷さんを見た!(偶然先生と同じ名前)すると、先生は「十点は…小林君です!君の、音の消え方、スタカートの入れ方…素晴らしいです。みんな拍手~!」

 まわりはポカンとしている。実は私の吹いた「ネヌエット」は課題曲の中で一番簡単で一番短い曲。他のみんなはもっと長い難しい曲に挑戦していた。

 

 勿論、私もポカン!としていた(この話は以前もエッセイに書いた様な気がする)。

 

 この噂は、学年中に広がり、隣のクラスの奴が「お前、笛の天才なんだって?教えてくれよ!」等と言ってくる。しかし、私は「メヌエット」しか吹けない。

 噂だけが独り歩きしていた。

 

 しかし、ここまで評価されると、腹が立つのは「兄貴」だ。

 

 私は、家に帰ると、「音楽の水谷先生が教師生活初の十点をくれた」と伝えた。すると、兄は「そんな訳はない。全ての曲はタンギングで弾くものだ!」と聞く耳を持たない。

 

 何だ!この家!私は早くこの家を出たいと思った。

 

 私の才能が、この家ではダメになってしまう…。とは言え、勉強は苦手だ!矛盾に満ちた志だけが空回りしていた。

 かといって「美術」も「音楽」も成績は普通だった。音楽の成績は笛のテストの時だけ三段階あがったが、次の学期にはまた下がっていた。

 

 私の脳は、偏ったピンポイントの才能の様だ!

 

 

 黒い花は落語と同じ。緑の街の様に、一人の声で全てを演じる演芸だ!無駄を省いた究極の芸に魅せられたのも、今になればうなづける。

 しかし、才能は…あまりなかった!

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直木賞には程遠い、青春エッセイを皆様に…

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