放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

藤井聡太・七段の五四金で思う、あの師匠…。

 テレビで藤井聡太・七段の一手「五四金」が話題になっている。これは、常識では考えられない手だという。テレビで解説する大御所のプロによると、昔なら「勝っても怒られる」手なのだそうだ。師匠が「田舎へ帰れ!」と言う手だ! とも言っていた。さらに「100万円持って人参を買いに行くような手」だと言う。

 それをトッププロの彼がやるから凄いのだという。

 

 この手を打った時。コンピューターは「不利」と診断したそうだ。しかし、実際は、その直後に大きく有利な体制へと傾いて行く。

 

 私はこれを見て、春風亭昇太師匠の若い頃を思い出した。まだ、二つ目の頃。昇太さんはカメラを出して高座から客席を写真に撮るという荒技をやっていた。

 そして「次回も観に来たら、この写真をお分けします」と言って笑いをとるのだ。

 かってに客を撮るなんて、大手テーマパークのジェットコースターみたいなシステムである。

 これは、落語の歴史に新たな風を吹き込んだと思う。

 

 しかも、昇太さんはNHKの新人落語コンクールでも、このカメラネタをやって賞を貰っている。

 

 そして、昇太さんのネタ「花粉寿司」では、高座で客席に対して真横になって寝てしまうシーンがある。これは、落語の固定概念を覆したもの凄い演出である。さらに、落語界初の「足の仕草」までしているのである。しかも、足の指の先が繊細な動きをするのだ。私は足の仕草に「上手いね~!」と思ったのは初めてである。

 

 落語は正座でやると言う固定観念を見事に壊して爆笑にする、まさに「五四金」の一手である。

 

 独演会では高座の上で着物を着替えて、拍手を浴びるという斬新な演出もしている。

 

 笑福亭鶴瓶師匠の新作(私落語)「青木先生」を観た時も、同じような感覚に襲われた。青木先生が黒板に文字を書く時、客席に背を向けるのだ。背中で演じる落語を観たのは初めてである。衝撃が走った瞬間だ。これも「五四金」の一手である。

 

 もう少し、時代を遡ると、桂枝雀師匠を思い出す。座布団からはみ出したり、アクションが大きすぎて、体ごと真横を向いてしまったり。大きな戸を開ける設定で舞台袖まで「ガラガラガラガラガラ………」と移動して開けたこともあった。

 

 落語で次の「五四金」をうつのは誰だろうか? それは、春風亭一之輔師匠かも知れない? いや、「千早ふる」など、すでに「五四金」または「五四二歩」(反則・褒め言葉)である(サンフリ・リスナーは聞いている筈)。

 

 ちなみに、三遊亭白鳥師匠は、すでに「一千万円持って人参を買いに行っている」様な気もする。皆さん、素敵です!

 

 

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