落語家さんの真打ち披露パーティーが続いている。結婚式がひと月に何回もあるのと同じだ。つまり、ご祝儀貧乏である。
私はお祝いのパーティーの時。たいてい蝶ネクタイをする。ネクタイを上手く締められないという事情もあるが、本当の理由は「憧れ」からである。
40年ほど前。あるラジオディレクターの結婚式に出席した時。安い黒の背広を買って初めて出席した。その時…。あの有楽町の有名ディレクターがタキシードに蝶ネクタイ、カマーバンドをしていた。その姿がやたらと格好良かったのだ。この方は、学生時代にジャズ研で学生サックス日本一になった方だという。
私はすぐに「蝶ネクタイ」に恋してしまった。「次は俺も蝶ネクタイにしよう」。
それから、数年後。私はある女性と映画「マルサの女」(映画のジャンルは関係なし)を見に行き、その帰りに「蝶ネクタイを買いたい」と言った。酒の飲めない女性だったので行くところが見当たらなかったのだ。
女性「だったら、私、良い店知ってる!」と言った。ついて行くと渋谷のデパート内。見ると蝶ネクタイとカマーバンドで三万円以上の値がついている。
私が欲しかったのはせいぜい六千円ぐらいの物だ。そこで「高いからダメ」と言えばよいのだが、心の中で「セコイと思われたくない」と叫ぶもう一人の自分が居た。
「いいねー!」何食わぬ顔で買ってしまった。当時、私は二十代前半。大して儲けていない時だった。
それ以来…。私はパーティーは蝶ネクタイとなった。しかも、高い蝶ネクタイは黒だったのでホテルの従業員と間違われる。結局、六千円でスカーフ付きの真っ赤な蝶ネクタイを買って愛用している。
高かった黒は高級パーティーにしか使わなくなった。インチキ司会者の様な軽い蝶ネクタイが業界人らしくて良いのだ。
それに合わせて、ジャケットも格安だ。実はワイズの黒スーツもあるのだが、それは葬式ぐらいしか着ない。
安物蝶ネクタイには安物がピッタリだ。下北沢の古着屋で買った六千円のVANの茶のジャケットに合わせている。ズボンはワイズのの黒とバラバラだ。
いや、今回は黒の襟がビニールみたいに光っているエセタキシード風の格安ジャケットにしよう。これは十年程着ていない。
とにかく、来月、また真打のパーティーがある。今、アイロンを出してジャケットのシワを伸ばしたところだ。上手く伸びないが…。まあ、よしとしよう。もったいないのでクリーニングも出さない。洗濯機で洗ってしまったのだ。
アクロンで何んとかなるものだ。仕上げなどどうでも良い。年取るとそんなものである。
結局。蝶ネクタイをしても格好良くならないのは何故だ?憧れはあくまで憧れである。
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