放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

上手いのにウケない先輩!

 数年前。東海大学落語研究部の一年先輩(一年上は一人しか居ない)の女性・Aさんに言われた「ビックリしたわ!二年でやめた同期のSが新橋のおでん屋で働いてたのよ!」。偶然飲みに行ったら店員に「Aさんですよね?」と言われたそうだ。

 

 40年程前。私が一年生の時、かなり威張っていた二年生だ。上方落語をやっていて、一見プロの様な語りでアラがない。とても上手い人に思えた。

 だだ…この方は、客にまったくウケない。「どこがヘタ」という訳ではない、むしろ上手いのだが…。三年の先輩に三人の天才が居て、やたらとウケる。しかし、同じ客の前でこの二年生がやると…シーン!と静寂が訪れる。今にもカッコウやウグイスの鳴き声が聞こえてきそうだ。勿論、一年の私もシーン!だったが、色々と一年に指導している二年がシーン!だと…「うっ!こいつ、教える資格あるのか?」と成ってしまう。

 

 一年の私は三年の先輩に聞いてみた。「なんで、二年生のSは上手いのにウケないんですか?」「おっ!それは、ヘタだからだ!ダダのコピーだからだよ!」。

 プロを元ネタにするのは良いが、素人がプロのコピーをすると「ツマラナイ」と言うことを知った瞬間だった(間や強弱まで完璧にコピーできる天才なら別だが)。

 

 このSさんは、我々一年に厳しい演技指導をしていた。「落語を観てないからヘタクソなんだ!」と、言葉の訛りなどに五月蠅く、一切「ウケるギャグ」を入れてくれたりしない人だ。しかも、夏休みが終わると…突然、クラブを辞めていた(二年の男三人が秋に全員辞めた)。一年からすると「散々、文句言って!何だよ!あいつら!」である。

 

 私は、その新橋のおでん屋に行ってみた。ワクワクして店内を探したが、もう、Sは居ない様だ…。クラブもすぐ辞めたS先輩!職場もすぐ辞めたのか!?

 

 ちなみに、これは5年程前の話である。つまり、60近いオッサンが辞めたことになる。今まで、ずっとフリーターだったのだろうか?独立して自分のおでん屋を出したことを祈るばかりである。

 

 もし、独立していたら、その店のおでんは「この店のコピー」だろう?見かけは同じだが不味かったりして…。バイトに厳しく当たって、しかも、突然、店を閉めるかも知れない。

 

 

 

宣伝。ネット書籍「嗚呼!青春の大根梁山泊東海大学・僕と落研の物語~」上・中・下

直木賞には程遠い、青春エッセイを皆様に…

安いです。上→200円。中→300円。下→300円。

「青春落語バカの楽しいエピソード」有名劇団の主催者や脚本家、演出家絶賛!

      ↓ 

 https://note.com/bakodayo1874basu