放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

プチ鹿島さん著「ヤラセと情熱~川口浩探検隊の「真実」~」一気読み!

 日曜朝のFМラジオ「サンデーフリッカーズ」春風亭一之輔汾陽麻衣(JFN)のゲストに、時事芸人のプチ鹿島さんがやって来た。

 

 そこで、私も鹿島さんの著書「ヤラセと情熱~川口浩探検隊の「真実」~」を一気読みした。「ヤラセ」をするには用意する者の苦労があることが良く分かる

 

 例えば今「おまえ、双頭の蛇を作れ!」と言われて製作できる有能なスタッフがいるだろうか?動く本物の蛇で作らなくてはいけないのだ。私なら「この仕事辞めさせてもらいます」と言うだろう。スタッフは大蛇二匹を縛って上手く作ったらしい。

 もはや円谷プロが宇宙人や円盤を作る様にクリエイティブだ。

 

 この本を読むと昭和のテレビの「熱さ!」が良く分かる。

 私もこの頃、新人放送作家を始めたが、他の番組も「熱い空気」「理不尽さ」は似ている。以前も書いたことがあるが、ラジオのPに「日本語の話せるベトナム人を連れて来てくれ!」と言われたことがある。

 私は生のベトナム人に会ったことすらない。ベトナム料理店など日本になかった頃である。今なら断るが、新人の私は雲をつかむ思いで留学生関連の団体に電話をしまくった。

 そこで、何と!早稲田の留学生を見つけてしまった。ラジオドラマの大統領の演説のセリフをベトナム語に訳して、役者がカタカナで読むと言うのだ。

 大統領役は大竹まことさんだった。翻訳を見た大竹さんは「発音が分からないから、訳した人にこの役やってもらえないか…」と言った。

 そこで、素人の留学生が役者として大統領を演じた。無理なことをなんとかしてしまう空気は「川口探検隊」だけではない。当時の空気として「あきらめない心」があったのだ。ちなみに、この留学生は国賓留学生でかなりのオジサン。40才ぐらいに見えた。国に帰れば国家の中枢に入る凄い方らしいが。駅で待ち合わせした時。私は早稲田の留学生は若者と思っているから、なかなか見つけられなかった。

 

 ある人に聞いた話ではドリフの「全員集合」で、絶対出来ない大道具の提案にスタッフが「できません」と言ったら、圧倒的なリーダーが「それを出来るようにするのが、お前らの仕事だ!」と言って作らせたという。しかも、新しい工夫を加えて本当に出来てしまったそうだ。大道具さんのプロ意識はまるで「プロジェクトX」の様だ!

 

 いい悪いは別にしてやはり、空気感に同じ物を感じてしまう。

 

 この鹿島さんの本に登場する放送作家の藤岡さんは、日本で事前に探検のロケ本を書いていた人だ。ロケ現場では探検隊の一員をやったこともあるという。

 実は、私はこの藤岡さんと同じ仕事をしたことがある。某・有楽町のラジオだったが、ある月~金のナイターオフの番組で藤岡さんは曜日担当の作家の一人。私はアシスタント作家だった(スケジュールがあわず、すぐ辞めましたが…)。

 

 この当時。私は藤岡さんから「川口探検隊」をやっていることを聞いた。丁度、作家の川口松太郎さん(川口浩さんのお父さん)がお亡くなりになった頃で、お葬式に弔問したら松太郎さん愛用の鞄を頂いたそうである。藤岡さんは、その鞄で仕事に来ていたので、私は「縁起良さそうなんで、触らせて下さい!」と鞄を撫でさせて頂いた。その時、私は川口松太郎さんの小説を読んだことが無かったので調子いい若者である。

 

 この番組では「片思いのラブレターを紹介する」コーナーがあって、会議で「コーナーのBGMは何が良い?」という話になった。誰も発言せず考え込んでいたので私が思い付きで「オールディーズの「恋の片道切符」はどうですか」と言ってみた。それを聞いた藤岡さんは「おお~!いいね~!」と言ってくれた。そのまま、BGМは決定。お陰で新人作家としては手柄があげられた。

 

 藤岡さんは、帰りに「チョット飯食ってくか!」と、私を誘い。有楽町のガード下でステーキを奢ってくれた。今となっては良い思い出である。

 

 その藤岡さんが本に登場するので、一気読みはさらに加速した。

 

 そして、ADさんがスプレーで蛇の色を変えていたことが書かれていた。ここで、私は「あっ!」と思った。

 私の大学落研の先輩に、川口探検隊のAD経験者がいて、蛇にスプレーを吹き付けるくだりを聞いたことがあったからだ。ヘビにスプレーを吹き付けると、皮膚呼吸が出来ず動きがドンドン遅くなったのだが、このことも私は聞いていたので…。多分、同一人物である。

 

 さらに、サンフリのゲストに来たことがある探検家の高野秀行さんもインタビューに登場。嘉門達夫さんもサンフリのゲストに来たことがある。

 ラスボス的に登場する放送作家の鵜沢さんも、私は面識がある人だ。

 

 私の人生と人脈と仕事がシンクロする、人生の伏線回収みたいな一冊である。もはや、私も「探検隊の一員」である。それは、言い過ぎか…。