東海大学落語研究部の一つ後輩に、頭下位扇平(とうかいてい せんべい)君という、ある地方の優良企業の社長がいる。
二十年以上前のことだと思う。彼が有力なOBに頼んで、地元でイベントをやることになった。彼は商工会の青年部の会長を務めていた。
そこで、私もイベント構成で現場に来て欲しいというのだ。
内容は当時テレビで人気だった「ミニスカポリス」を招いてのゲームとクイズ。司会は三遊亭愛楽師匠と決まっていた。
「ミニスカポリス」と聞くと、なんだか華やかだが、これは番組に出ていた本物のタレントさんではない。別の女性タレントに「ミニスカポリスの衣装」を着せたものだった。商店街の怪獣ショーに本物のスーツアクターは入っていないのと同じ理論で、無理やり作ったイベントである。
これは、一般公開はせず商工会だけの集まりだったので、アバウトな部分も許されていたようだ。
当日。三遊亭愛楽さんの司会がさえて、会場は笑いに包まれていた。ミニスカポリスの二人が踊って、ミニスカートの中に書かれた文字を当てるというクイズなど、少しお色気系の遊びで、賞品が当たるのだ。
会場は盛り上がり、我々はホッ!としていた。これで、役目を果たせたからだ。
しかし、一度目の公演を終えたその時。事件が起こった!
ミニスカの二人が泣きながら言った。
「私、もう出来ない!」
「私もできない!」
マネージャーが訳を聞くと、お客さんの中に体を触った人がいるというのだ。
「私、こんなの聞いてない! 帰ります!」
これには困った。「ミニスカポリスショー」は二回公演だったからだ。ここで、帰られては、二回目は三遊亭愛楽独演会になってしまう(それが悪いとは言ってませんが)。
主催の扇平君に聞くと、昨年のイベントでAV女優を呼んだらしい。お客の一部が同じタイプのイベントだと思っていた様だ(AV女優も触ったらダメだと思うが…)。
そこで、イベントに立ち会っていた大物OBが扇平君に言った。
「お前が土下座して、今日一日何でもするから、もう一回出てくれと泣いて頼め! 主催がそこまですれば何とかなるだろう」
そこで、愛楽さんと私と扇平君。そして、全体構成をした大物OBと四人で、ミニスカのホテルを訪ねることになった。
ドアが開くと、扇平君は打ち合わせ通り「土下座」して、「お願いです。もう一回イベントやって下さい」
愛楽「社長も、こう言ってるんだから…許してやってよ!」
大物OB 「そう、全部、社長の扇平が悪いから、今日は、何でもご馳走するし、何でも言うこと聞くって言ってるから、考え直してよ!」
ミニスカA「どうしようかな~!」
ミニスカB「本当に何でもするの~?」
扇平「何でもします」
二人は、我々を部屋に入れると…。
A「じゃあ、社長! 高級中華食べたいな~!」
扇平「夕食は高級中華にします」
B「社長! 後でメロン買って来て!」
扇平「分かりました」
A「明日は、鯛茶漬けね!」
扇平「分かりました」
B「社長! 肩もんで!」
扇平「はい!」
これは、完全に落研時代の一年生いじりと同じだ。
段々、我々も面白くなってきた。
私「社長! コーラ買ってこい!」
扇平「はい!」
大物OB「社長! パン買ってこい!」
扇平「はい!」
B「社長! ドンペリとって!」
扇平「いや、ここには無いと思います」
A「じゃあ、出るのやめよっかな~!」
扇平「別の高級ワインで許して下さい」
B「しょうがない、許してやるか」
愛楽「社長! ギャラ上げて!」
A・B「それいい~~! うける~!」
愛楽さんと我々の盛り上げと、落研で培った扇平君の理不尽に耐える振る舞いで、何とか二回目の公演が行われた。
ミニスカの二人は、楽しくなってしまった様で、二度目は少しぐらい触られても文句を言わなくなっていた。
愛楽さんも笑い過ぎて可笑しくなってしまい。司会が覚醒していた。
「皆さん、ミニスカのお体へのタッチ、抱擁は禁止でございます。なにとぞ、お手を触れませんように! では、ミニスカさん! はりきってどうぞ~!」
もはや「ストリップ小屋」の司会「鶯谷ミュージックホール」みたいである。
我々は、その夜、社長のオゴリで食べまくり、飲みまくり、最高に楽しい夜を過ごした。
そして、帰りに私と愛楽さんは、社長から手渡しでギャラを貰った。
これが、驚くほど少なかったのを憶えている。
社長は、金の使い方が間違っている様だ。
もっと、土下座させるべきだった。と、今も思う私である。
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