放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

新人の頃の思い出…

 38年程前だろうか…。新人・放送作家の頃。ある先輩に触られた仕事があった。私は全く知識のないタイプのテーマだったので「僕は詳しくないんで無理です」と断った。

 

 それを知った、少し先輩の売れっ子作家Sさんが私に言った。

 「知らなくても、せっかく来た仕事は受けなきゃダメだよ」

 「でも、戦力にならないですよ」

 「受けてから勉強するんだよ。俺はまったく知らないジャンルでも受けてから勉強して何とかしてるぞ!断ったら、その人からは次が来ないよ!」

 

 私は「知らないのに知っているフリをして仕事を受ける」のは詐欺行為だと思っていた。

 

 数年後。私はがチーフだった音楽番組で新人に「音楽詳しい若手いないかな」と言われたので、別の番組の若手に聞いてみた。「キミは音楽詳しいかな?」すると「僕、音楽詳しいです。やります」と言った若手が居た。

 私は信用して紹介したのだが、後で知識がまったくないことが判明した。しかも、この若手は勉強することもなく参加していた。スタッフが優しいのでクビにはならなかったが…。私の心は「もやもや」する。

 

 私は音楽のことをあまり知らないから偉そうなことは言えないが、私はバラエティ的な構成部分の受け持ち。なので「音楽的」な構成を出来る人を探していたのだ。

 私の時は「音楽は苦手ですよ」「音楽は他の人に頼みますから大丈夫です」という入り方だった。

 昔、先輩作家が言った「受けてから勉強すればいい」はうなづけるが…。肝心な「勉強すれば」の部分が抜けると「完全な詐欺」である。

 私も「詐欺師」を紹介したイカサマ紹介人になってしまった。これ以来…。私は「自己申告の得意です」は信じない様になった。

 

 昔、作家事務所に所属していた時。師匠Mがニュース番組を始めた。私も入る様に言われた。私は「ニュースは分からないので…」と断ったが「これは、命令だ!」と言われ、同時に二本のニュース番組を担当することになった。

 私は1年ぐらいはやったと思うが…。スタッフに「実は僕、他の仕事で地方に居て立ち会えないし、ニュースは活躍できないんで辞めたいんです」と、それとなく伝えていた(その時は仕事が多過ぎたのも理由だが)。

 

 会社員の皆さんに「ふられたらやれよ!」と言われそうだが…。

 一応は辞めるまでは精一杯参加していました。「勉強」もしたが、スタッフは国際政治のスペシャリスト。私が提案する特集用のネタなど「ああ、それは、今は情勢が違うね!」等と言われてしまう。

 新聞や書物の情報は彼らには通用しなかった。取り上げる社会情勢が決まれば「見せ方」の案を出せるが、元の題材提出など、私には、もう、どうすることも出来なかった。

 

 ある日。師匠Mが「お前…ニュース、辞めて良いぞ!」と言った。直接言ったら怒られたと思うが、スタッフから遠回りに「辞めたがっている」ことが伝わったのだと思う。

 実はギャラは高いものだったが…。若気の至りだ…。

 

 

 

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直木賞には程遠い、青春エッセイを皆様に…

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