放送業界のお話と落研と私的な思い出

放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

「仕事は運命がくれる」

 成功した放送作家の仲間に話を聞くと、皆さん、自分でやりたくて入った世界なので色々アピールして仕事をもらえるように動いたと言う。


 個人の商売だから、これは、当たり前のことなのだが…。私には驚きである。

 私の経験で言うと「仕事ありませんか?」と言った時にもらった仕事にはロクなものがない。

 そんな時の仕事はやたらと大変でギャラが安く、楽しくもない。しかも、仕事がもらえればいい方で「仕事なんてないね!」と言われておしまいである。

 私の感覚では「仕事を下さい」という人は「仕事が無い人」「売れていない人」と思われる様な気がする。皆さん仕事は「売れている人」に頼みたいのだ。


 「今、仕事できる?」と聞かれたら「今、スケジュール無いんだけど、〇〇さんの為なら無理してやりましょうか」ぐらいのスタンスの時「是非、お願いします」とギャラまで高い仕事が来る。私に関しては、それがパターンなのだ。

 

 しかし、一般的には「やる気」を示して「アピール」して仕事をもらっているらしい? 人によってノウハウとは違うものだ。

 

 ある日。電車を乗り間違えてしまった時、三十年前のラジオのディレクターと車内で出会った。聞くと、今はミュージシャンのマネージャーをしているという。

 

 「最近、どうですか?」と聞かれたので「みんな、落語の知識ばかり俺に聞いて来るんだけど、教えても金にならないし迷惑ばっかりだよ。
 こっちは、自分の仕事があるのに、便利に使われちゃって…。業界の人、落語の知識ってほとんど無いんだよね!」。
 
 私は名刺を交換して別れた。

 すると、翌日、電話が鳴った。

 

 昨日の元ディレクターだ。聞くと、あるプロデューサーが今度「落語」の番組をやることになって、落語の知識がある人が居なくて困っているというのだ。

 しかも「嫌なら断っていいからさー」と言っている。ロクな話ではなさそうだ。


 「また、知識だけ提供して金にならないのか?」と思いながら、会いに行くと。
 私に構成のチーフになって欲しいとのこと。しかも、ブッキングまでやってもらいたいというのだ。

 

 私は「仕事を欲しい」とは一言も言っていないが、「落語に詳しい」という情報を伝えただけで、ミラクルが起こったのだ。

 

 その番組は「落語者」というテレビ朝日の深夜番組だった。

 

 この話を仲間の放送作家にすると「考えられない」「自分で動かず仕事」になったことは無いと首をかしげる
 どうやら、このパターンが多いのは、私だけのようである。

 

 そう言えば、春風亭一之輔師匠のFМラジオ「サンデーフリッカーズ」(JFN)の時も、三十年ぶりぐらいに、東京FМでやってた「耳の穴」という番組のディレクターKさんから突然電話があった。

 

 「思い付きで上司に、FМの朝の番組で落語家が喋るってどうですか?」と言ったら「それ、新しいね!」と言われて困って電話してきたという。


 「落語のことは分からないから、候補の落語家を選んで欲しい」というのだ。

 

 そこで、私が好きな落語家を三人程ピックアップしてプレゼンした。すると、困っている割には意外な注文が来た。「年齢が30前後でいませんか?」と言うのだ。落語のことを知らないというのは恐ろしいものだ。30前後はほとんどが真打に満たない。前座の場合も多い年齢なのだ。

 

 仕方なく、三十前後の落語家をリサーチすると、女子の落語家は名鑑で年齢を公表していない人が多いことに気づいた。そこで、女子は候補から外してしまった。年齢を公表すればオーディションに呼ばれたかも知れないのに、これでは名鑑の意味がない。
 女心は演芸界では敵になるのだ。

 

 そこで、一人だけ、二つ目でダントツの輝きを放つ男がいた。春風亭一之輔である。ラジオのパーソナリティなので、落語の上手さよりフリート―クの上手さに注目したのだが、落語の方も超一流だった。

 

 偶然が偶然をよんで、ものすごい金の鉱脈をみつけてしまったのだ。

 

 オーディションは一之輔さん一人しか呼ばなかった。ほぼ決定なので音声チェックの形式で行われた。

 

 すると、一之輔さんはニュース原稿まで初見でノーミスで読んでしまったのだ。局の上司は驚きの表情だ。ニュース原稿を初見でこんなに読めたタレントを見たことが無いと言う。

 これは、一之輔さんの持つ「勝負強さ」が良く表れている。

 私が「よく、初見で読めたね」と言うと、
 「たまたま、読めちゃったんです。今、読んだら初見では読めません」と言っていた。

 

 しかも、一之輔さんはオーディションには落ちたと思っていたようだ。

 

 それは、私が三か月ぐらい連絡しなかったからだ。とは言え、これは仕方がない。局のプロデューサーKから連絡が無かったからだ。私などは番組自体が無くなったのでは? と思っていた。

 

 突然「来月から、始まります」と言われて、慌てて連絡。急いでアシスタントのオーディションを決行。慌ただしく番組が始まったのだ。

 

 人気番組とは、偶然始まるラッキーパンチが多いのかも知れない。

 

 

宣伝。ネット書籍「嗚呼!青春の大根梁山泊東海大学・僕と落研の物語~」上・中・下

安いです。上→200円。中→300円。下→300円。

      ↓ 

 https://note.com/bakodayo1874basu