放送作家仲間と新橋で飲んでいたら、いつもふざけた質問をするとぼけた若手作家が(本当は若くないが…)いきなり「初キッスはいつですか?」と聞いて来た。
来月六十五歳のオッサンに聞く質問ではない。そのギャップで笑おうという奴の手口である。
私は素直なので「これは、おいしい」と思ってしまう。普通のサラリーマンなら「言えないよ!」で終わってしまうが、我々はこのフリを生かしてこその職業だ。
即座に「十九!」と答える。「えっ!相手はどんな人?」「大学の同級生」「二日に一度は彼女のアパートで晩御飯を食べていた」など、どんどん広がる。
「きっかけは?」「その人の妹が高校生で俺のファンで手紙が二日に一度届いた」「もてもてじゃないでいか?何で妹が手紙くれるのに姉とつきあったんですか?」「妹は一年後、大学に入ったとたん同級生の男と出来ちゃった」「ありゃ〜!」「そしたら、姉から告白されたんだよ」「やっぱりモテモテじゃないですか!可愛かったんですか?」「う〜ん!…見方によっては…う〜ん!普通…妹は可愛かったけど…」急にテンションが下がる。
「何でダメになったんですか?」「こんな職業だから親が反対した」全員同業者だけに、共感のため息が出る。遠い昔のことなので話した私にダメージはない。
しかし、数年前小田急線の中で、その時の彼女にソックリな女子大生風の娘を見かけて「あなた、もしかして母親は〇〇〇〇〇さんじゃないですか?」と聞きそうになったが、怪しすぎるのでやめた話をした。結末は分からないまま…話は終わった…。
オッサンの十九、二十歳の時の話で新橋の夜はふけていった。
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