遅ればせながら…。令和6年・NHK新人落語大賞をみて思ったことを綴る。私は生で観て全員を応援していた。
中でも春風亭一花さんの「かけ込み寺」は「えっ!」と思った。私が聞いたことのない噺だったからだ。演じられなくなった噺を近年、どなたかが掘り出したものだ。私は東京かわら版などで演目は目にしたことがあるが…。「一度、やらなくなった噺だったら、多分、面白味はないのだろう」と思っていた。
しかし、一花さんのこのネタは「面白かった」。感情の変化も笑いもある良い噺だ。多分、掘り起こした方(柳枝さんか?)が相当のアレンジを効かせたと思われる。または、一花さんのアレンジもあったのだろう。
私は「これは、一花さんの優勝だな」と思った。
しかし、その次に登場した桂三実さんの新作が大きな笑いをとった。こちらも、とても面白かった。「これは、一花さんか三実さんの優勝だな」と予想した。
実は個人的には「古典」の一花さんオシだったが、審査員の好みでどっちにも転ぶと思っていた。
結果。僅差で三実さんが大賞となった。
三実さんの新作は「早口言葉が現実になってゆく」という噺だ。この作りの上手さ、頭の良さの勝利だと思う。
普通の落語は前半に「仕込み」をして「後半失敗」する。ご隠居さんなどに何か教わってマネして失敗するパターンだ。
ところが、テーマを「みんなが知っている早口言葉」にしたことで「仕込みの時間」がいらなくなっている。国民の人生で遭遇した「定番の早口言葉」は人間が生きているだけで「仕込みが」終わっている。これは「新作の作り方の大発明」である。
「仕込み」時間を使わず、いきなり「笑い」に行けるのだ。これは「作者としても天才的」だと思う。
王道で一から状況を作って巧みに笑いを取った一花さんの古典は素晴らしかったが…。新しい発想の凄さに軍配が上がったのではないだろうか?
甲乙つけがたい闘い!ワールドシリーズの大谷。日本シリーズのベイスターズとホークスの様に、最高レベルの争いだ。
今回の六人。ネタと順番と客層により誰が優勝してもおかしくない。結果は紙一重だ。
ちなみに…あくまで個人の感想です。