春風亭一之輔のFMラジオ「サンデーフリッカーズ」(JFN)のゲストに、放送作家の松田健次さんがやってきた。
私は彼が放送業界に入った直後から面識がある。高田文夫先生の弟子として車の運転をしていた。出しゃばらず奥ゆかしいが、自分をアピールするポイントは分かっている賢い人の印象だった。
私は5~6年先輩だと思うが…。当時、私の方が落ち着きも自信もなく、子供っぽかったと思う。私は運90%で色々な仕事を貰っていたので、才能のありそうな新人は驚異だ!聞くと国立・埼玉大の落研出身だという。
「落研?!」このワードが私には響いた。偏差値は低いが、我が東海大学落語研究部は大きなプライドを持つ集団だ。とくに、国立の落研には敵対心がある。「どうせ、知識だけだろう。笑いや演技の基本は出来ていない奴らだ!すぐに辞めるだろう」そんな感覚を持っていた。ほとんど、嫉妬心である。
松田君とは一緒に仕事をしたことはないが…。人づてに「あいつは、書ける作家だ!」と言う評判を聞いた。私の予想は外れ、かなりの才能の持ち主だった。
数年前。松田君は「落語を聴くなら春風亭昇太を聴こう」(白夜書房)を出版した。早速、読むと…。爆発的に面白い!タイトルは「春風亭昇太」だが、作者の比喩と書き回しの上手さのオンパレード。一人の落語家だけで「ここまで色々な表現」「ボケ」「突っ込み」「賞賛」が出来るのかと感心するばかりだった。
全編が「プロも唸る華麗なる松田的書き回しショー」だった。しかも、本の中には私の名前まで書かれていた。
あの時の衝撃は忘れない。「奴はタダ者ではない」とより強く思ったものだ。
誰かの真打昇進披露パーティーだったと思うが、会場に松田君の姿があった。声を書けると「小林さんは昇太さんに関する本とか書かないんですか?」と言われた。
私は個人的に書いた「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語~」(当時、未発表)のことを言おうとしたが、引っ込み思案の私は「いや…」としか言えなかった。
数年前。吉祥寺で若手の二人会があり、私は気まぐれに足を運んだ。すると、その落語会の主催が松田健次となっていた。
そこで、私は柳家わさび(二つ目時代)を初めて観た。そして、新作の完成度とセンスに驚いた!さらに、わさび君はゲストの似顔絵(大宮エリ―)をその場で書くパフォーマンスまでやっていた。
私はすぐに、某BSの若手大喜利のメンバーにわさびを押した。「凄い才能の若手がいるんですよ」。実はダメ元でのプレゼンだったのだが…。「直接観てそこまで言うなら…」と一度呼ぶことになった。
当日。柳家わさび君は誰よりも笑いを取った。それを見た局のプロデューサーの会話が遠くから聞こえて来た。「この子、誰が見つけたの?」「小林が見つけて来たんですよ!」私は声には出さないが嬉しくて飛び上がる程だった(以前も書いたことあり)。
私よりとっくの先に松田君が彼の才能を見抜いて落語会を開いていたのだから、私はひったくりのドロボーみたいなものだ。彼の先見の明は凄いのだと思う。
「サンデーフリッカーズ」の生放送でいきなり「ほら貝」を吹くという前代未聞のパフォーマンスも驚いた!「理由なき反抗」である。
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