放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

母に買ってもらったオリンパスOM1…

 40年以上前の事だ。私が中学生の頃…。柔道部に入り副部長と成り、初段も取った。この時は、中学生では市内に二人しかいなかった初段だ(郡を入れると沢山居たが)。弱かったが、運もあって取れてしまった。中学生時代唯一の自慢である。

 

 その頃。課外活動のクラブとは別に授業でやるクラブがあった。つまり、柔道部などに所属する者は、もう一つクラブに入ることになる。多分…帰宅部にもクラブの体験をさせるという教育だったのだろう。

 

 私は授業のクラブは写真部にした。階段の下に暗室があって、部員だけが現像することが出来るのだ。

 これは、特別な感じがしてワクワクする。クラブの日は各自カメラを持ち寄るのだが…。父親に借りたカメラは戦後すぐのもので、武骨で格好悪い(今なら逆にアンティークで良いのだが、子供には分からない)。

 他の奴らは最新式のカメラを持っていた。中でも、発売されたばかりのオリンパスOM1を持つ男が居た。このデザインがとても格好良く思えた。

 何だか分からないが「一眼レフ」という言葉が心に刺さる。当時、一眼レフは憧れの最新機種だった。他にペンタックスもテレビCMで人気だったが…。知識のない私にはデザイン先行で、OM1が好きになってしまった。

 

 しかし、そんなに裕福でもない我が家で「オリンパスOM1を買って」などと言えるわけがない。当時の子供にとって一万円を超える物は手の届かないものだ。

 当時、OM1は七万円を超える価格だったと思う。

 

 そんな秋。母親が突然、口を開いた。「クリスマス、何か欲しいものない?」私は反射的に「カメラ!オリンパスOM1!」と言ってしまった。

 すると母親は「いいよ!」と簡単に言ってのけた。今思うと、値段を知らなかったのではないだろうか?

 後日。カメラ屋へ母親と一緒に行って買ってもらったのだが…。私は「これ、高いから買わなくても良いよ!」と言うと「何言ってるの買うわよ」と、簡単に買ってくれた。私にとって十代で最高額の私物と成った。

 

 しかし、写真を撮ると現像代が高いので、毎日、磨いて、覗いて、フィルム無しでシャッターを切る。そんな毎日が続いてしまった。

 子供の私は、買った後の現像代のことを考えなかったのだ。白黒フィルムを買って学校の暗室で現像する時しか撮ることはなかった(白黒のみ現像できた)。それも、年に一度ぐらいしか私が暗室を使う順番は回ってこない。

 

 結局…。憧れのOM1がカラー写真で活躍したのは三年の修学旅行の時だけとなった。クラスのみんなに焼き増しした写真を10円高く売ると言う、セコイ商売でフィルム代と現像代が出た。綺麗に撮れた教会の写真が飛ぶように売れたのを憶えている。他の奴の二眼レフではフラッシュ無しでは写せない、ステンドグラスの光がOM1のシャッター速度を落とした設定で撮れたからだ。

 

 そして、中学卒業後の高校の三年間。カメラを使うことは無かった。今、思うとそんなにカメラは好きでなかったのだと思う。

 あの時。カメラでなく「フォークギター」を買っていれば、もっとうまく成れたのにと思う。高校で計算尺部に入ってしまったが…。軽音楽部に入ればギターが弾けた。

f:id:bakodayo-basu3:20220211230128j:plain


人生最大の選択ミスである。

 

 大学に入り。このカメラで落研の全国老人ホーム慰問の写真を沢山とることになるが…。卒業するとほとんど使うことは無くなってしまった。

 当時の高い値段を考えると、まったく無駄な買い物だ。母親には本当に申し訳ない気持ちで一杯だ。

 

 後に「岡本太郎美術館」で、太郎さんがOM1を愛用していたことを知る。実際に使っていたOM1が展示されていた。私のものと同じである。

 あの造形美に五月蠅い岡本太郎さんが愛用していた…。私がデザインに惹かれたのは、間違っていなかったと確信した瞬間である。

 

 その後。OM1はレンズがカビてしまった。メンテナンスに出して除去してもらったが、完全除去は出来なかった。勿論、写真はとれるが無理して買ってくれた母親に申し訳ない気がした。

 写真のレンズは純正ではなく、中古で買ったズームレンズである。千歳船橋のアンティークカメラを修理販売しているお店で、三千円程で売っていた。このレンズも写真はほとんど撮ったことがない。

 

 今、思い出して…。追伸。このカメラを使った最後は…。ミュージシャン・セピアンローゼスのオールナイトニッポンの最終回の日。

 スタッフやマネージャーさん。局の前に集まったファンの様子など…。30年程前のことだろうか…。

 

 

 

 学生時代。このカメラで老人ホーム慰問の写真を撮っていたころのお話。

    ↓

宣伝。ネット書籍「嗚呼!青春の大根梁山泊東海大学・僕と落研の物語~」上・中・下

 

「嗚呼!青春の大根梁山泊~放送業界編~」も出てます。

 

直木賞には程遠い、青春エッセイを皆様に…

安いです。上→200円。中→300円。下→300円。

「放送業界編」800円(高そうに見えますが、上中下に分けていないので、枚数と値段は同等です)

「青春落語バカの楽しいエピソード」有名劇団の主催者や脚本家、演出家絶賛!

社会人落語の大御所・若木家元翁(元治ー)さん(国学院OB)も読んだかどうかは分からない名作エッセイ!

      ↓ 

 https://note.com/bakodayo1874basu