古典落語の「藪入り」は、奉公に出た息子が年に二回の藪入りで帰って来るお噺。子供は「鼠とりの懸賞」で当たった15円を財布に入れている。
親は、子供が湯に行っている時に財布を見てしまう。15円というあまりの大金が入っているので「盗んだのでは?」と疑ってしまう。
私は40年前の大学生の頃…。この噺が好きではなかった。「親が子供の財布など見るだろうか?」と疑問を抱いていたのだ。「そんなこと、常識的にするはずがない」と思っていた。
ある年末。放送作家になってレギュラーが10本以上あった頃。帰省した私は田舎の近所を散歩しにでかけた。神社の土俵や藤の木などを見て歩いた。田舎にいる時は、祭りで少し見る程度だったが、大人になってじっくり見ると、中々良いものだ。
自宅に帰ると…。オヤジが言った。「お前、財布に札束が入ってるじゃないか…。大金を持ち歩くと盗まれるぞ!」。
驚いた!当時、三十過ぎの息子の鞄を開けて財布を見ていたのだ。私は、年寄りがしょうがないなー!と思い怒りもしなかったが…。ふと、思うと…。これは古典落語「藪入り」と同じだ。
やはり、親は子供が心配になって財布を見てしまうものなのだろうか。私の中では「無理のある設定」だと思っていたが…。過保護な親は「子供の財布を見る」ものなのだ。
古典落語の奥の深さと、自分の人生経験の無さを痛感した三十過ぎの私だった。
ちなみに、札束といっても三十万ぐらい入っていただけ。数か月分の小遣いをまとめておろしていただけのことなのですが…。
親には「こいつ、いつも財布にこんなに入れてるのか!」と安心すると共に不安になったのだろう。うちの親は財布に2~3万円しか入れない主義の人だ。昔は近所にドロボーが多かったのか、必要最小限しか持たないのだ。
しかし…。私は親の鞄や財布を見たことは無い。それが普通だと思うのだが…。
まだ「藪入り」の親の了見が分からなかった頃。財布には3千円ぐらいしか入っていなかった頃。いつも、先輩が奢ってくれた。クラブの先輩がいれば、いつでも何か食べられると思っていた頃のドキュメント!そんな先輩も仕送りで生活していたのだが…。ちなみに、先輩や後輩の財布をかってに見たことは無い!
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