ここ数年、中学二年~三年の時の担任の先生に、私の担当している番組のカレンダーを贈っている。
担任の大場先生は、当時、二十代の若い女性の先生で英語を教えていた(静岡県磐田市立城山中学)。今思うと、大学を出たばかりの美人教師だ。
当時の中学男子はまったくそんな感覚は無く「オバチャン」と呼んでいた。
私は二年の四月。初対面でいきなり、この大場先生に怒られた。その時、学校指定の上履きではなくスリッパを履いていたからだ。
でも、これは不良で校則を破った訳ではない。柔道部の練習で足の指を骨折していて、上履きが履けなかったのだ。
一年の三月に骨折したばかり。新担任は「クラスにダメな奴が居る」と思って怒ったのだろう。私は自信たっぷりに「これ、骨折してるんで医者に言われてスリッパにしてます」と言った。男子の先生なら「それなら、先に申告しろ!」と怒るだろうが、大学出たての先生は「そうなの…じゃあ、しょうがないわね~!」と不良じゃないことに安心していたようだ。
この大場先生は、私の性格をいつも勘違いしている人だった。風邪を引いて体育の水泳の授業を見学していた私を見た大場先生は「小林君!本当は泳ぐのが嫌やなんでしょう?」と同級生の女子みたいなことを言って来た。
私は運動神経は弱いが、泳げないこともない(スピードは遅い)。しかし、平泳ぎの遠泳ならいつまでも出来る(クロールで顔をつけるのは苦手)。
そして、私は例え嫌でも「ずる休み」する男ではない。その辺の心が分からないところも、同級生の女子と同じである。
秋の体育祭の時。私は柔道で腰を痛めて、歩くのがやっとという状態だった。私は大場先生に、「運動会で走るのは無理です」欠場させて下さい。と言った。すると「ビリでも良いから走りなさい」との返事。
そこで真面目な私は「痛みを押さえて中距離に出場」した。あきらかにジョギング程度の速度で走る私に仲間から声援が飛んだ。私は反射的に手をふりながら走った。すると、歓声が上がった。
翌日。ホームルームで大場先生が言った。「体育の本間先生が、小林君が全力で走らないのはふざけていると苦情を言って来たので、腰を痛めているからとフォローしてあげたわよ」。
だから、走れないと言ったのに…。なんだか私が悪いみたいである。しかも、体育の本間先生は私に冷たく当たる様になった。
今思うと新人の「教師びんびん物語」状態の先生は、色々と判断がちぐはぐだったのだろう。
修学旅行の時。京都の宿で大浴場まで行ってタオルが無いことに気づいた私は、取りに戻った。その時部屋へ行く通路の途中に女子風呂の入り口がある。
大場先生がそこに立っていた。風呂から出て来た私を見て「あっ!女子の風呂覗きにきたでしょ?しょうがないわね!」と言った。私は「タオル忘れたんですよ」と言うと先生は「またまた~!」と言った。何とも失礼な話である。しかも「またまた~!」って何だ?!これもクラスの女子みたいな言葉使いである。不正の嫌いな私が覗きなどする訳が無い。
この時の苦情を同窓会の時、先生に言うと、横からK君が入って来た。「それは、俺とOが、その前に女子風呂を覗きに行ったから、先生が見張りに立つようになって、そこに通りかかったから間違えられたんだよ!」
成程…何十年もしてやっと真相が分かった瞬間である。
私は、この大場先生に感謝していることがある。高校進学の時の話だ。先生が「あなたの行けそうな高校は…」と提示してくれたのは、どこも、行きたくないところばかり。私がどこも嫌だと言うと…。
先生は「小林君は何になりたいの?」と聞いた。私は「大学に行きたいです」と答えた。大場先生はビックリした顔になって「大胆なこと言うわね~!大学となると…」困った先生は「あっ!付属校なら行けるかもよ!」と、推薦入学がある大学の付属校を勧めたのだ。「大学行けるんですか?」と聞くと「成績が良ければね!でも、同じくらいの成績の子が来るんだから、真面目にやれば大丈夫よ!」「じゃあ、行きます」。この会話がなければ、今の私の職業も無いことに成る。
この時私はドラマ「俺たちの旅」の中村雅俊に憧れていた。先生には言えなかったが、あのダメな大学生達の青春がやりたかったのだ。将来の展望も志も何もなかったことになる。ここは先生に申し訳ない限りだ!
しかし、あの大学に行って、あのクラブに入らなかったら…。S師匠との出会いも、放送作家への誘いも無かった。
同窓会で大場先生に会った時。「あの時、勧めてくれた高校のお陰で人生が変わりました」と伝えた。
すると先生は「そんなこと言ったのは、小林君が初めてよ!みんな、何であんな学校勧めたんですか?って苦情言うのに、そう言われると嬉しいわ!」と笑っていた。
今日。番組のカレンダーを贈ったお返しに、大場先生から「ズワイガニ缶と有明海苔の詰め合わせ」が届いた。
かなりお得な物々交換である。
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