コロナ禍になる前。私は名古屋の中京テレビ主催の落語会「ささしま落語」のプロデュースをしていた。
私のお勧めする最強の二つ目の落語家さんだけが出演する、夢の会だ。これは、野球で言えば「ジュニアオールスター戦」である。しかも、すでに一軍で大活躍している者もいる。
私が選んだのは、柳家わさび、桂三四郎、柳亭小痴楽、瀧川鯉八、昔昔亭A太郎、春風亭昇々、桂宮治、春風亭昇也、三遊亭わん丈(順不同)。
当時の二つ目で眩いばかりの輝きを放つメンバーである。私は、この人選に絶対的な自信を持っていた。なんのしがらみもなく、本当に今観たいメンバーだからだ。
第一回目の時。私はネタ帳の文字を柳家わさびさんに頼んだ。本来は香盤が下の者がネタ帳を書くのだが、わさびさんは「寄席文字風」のキレイな字を書く。そこで、あえて、わさびさんに頼んだのだ。
さわびさんは、快く引き受けてくれた。
そして、言った。
わさび「ネタ帳のタイトルは、小林さんが書いて下さい。小林さんが書くべきです」
私「えっ!俺、ヘタだよ!」
わさび「ヘタでも、小林さんの集めた会なんですから、書いて下さい」
そこまで言われたら、私も断れない。学生時代、少しだけ寄席文字で看板を書いたことがあるが、ヘタなので担当を外された私だが…。
ここは、精一杯の力で書くことにした。
私「こんなんで、どうかな?」
わさび「ああ、充分です!素晴らしいですよ!」
お世辞でも褒められて嬉しい私が居た。
その時、私が書いたネタ帳の表紙と柳家わさびさんのネタ帳の中身の写真が、下のものである。
やはり、わさびさんの方が上手い!
「ささしま落語」のメンバーも、ほとんどが真打となった今。この会の再会は無理だろう。昇也さんも、もうすぐ真打だ。あとは、わん丈さんを残すのみ。全員が今後も活躍してくれると思う。
この仕事に関われて私は幸せだった。誰か、私の表紙の文字を褒めてくれないだろうか?一応は、橘流寄席文字のつもりである。
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