私は、元フォークダンスDE成子坂の、故・桶田敬太郎君と釣り仲間だった。キス、鯛、カワハギ、アジ、サバ、ワラサ、ショウサイフグ、シーラ、イワシ、ブラックバス、トラウト、アオリイカ…。乗り合いの船釣りから、チャーター船、一人乗りの小舟、浜からの投げ釣り、など、あらゆる釣りにつき合ってきた。
その中でも、アオリイカは良い思い出がまったくない。熱海の公園からの釣りで、生きたアジを餌にした「ヤエン」(特殊な金具の針)釣りに挑戦したのだが…。
餌をとられることはあっても、ヤエンの針にかかったことはない。何度、やっても外れてしまう。三度ほど行ったが、アオリイカの姿を見ることは無かった。
生き餌のアジが、次から次へと犠牲になる。上げると頭だけ無くなっていたりするのだ。続けるうちに「このアジ、フライか唐揚げにした方が良いんじゃないのか?」と思い出す。釣りは漁としてはあまりに効率が悪いのだ。
この釣りは、未だに正解が分からず…二人共やめてしまった。
ある時期。管理釣り場のトラウト(マス)に通ったこともあった。神奈川の釣り堀だったが、何度通っても、上手く釣れない。
アオリイカの時は、他の釣り人も釣れていないのであきらめがついたが、管理釣り場では、他の客はドンドンと大物を釣り上げている。レインボートラウト(ニジマス)、巨大ヤマメ、巨大イワナ、等も居る。
何で俺たちだけ釣れないんだ!!
いったい、何が違うのだ?
我々は釣れている人と同じルアーにして、同じ動かし方をしてみた。しかし、まったく、当たりがない。
釣り場の職員に相談すると、天候、季節によるルアーの色など教えてくれるが、やはり全くあたりは無い。
次回、朝早く行って前回常連客が釣れていた場所に陣取ってみた。同じルアー、同じ動かし方である。しかし、まったく、当たりは無い!
こんなことの繰り返しが何回か続いたが…。我々は、根性で通っていた。何の策もなく、もはや、精神論で乗り越えようとしていたのだ。
すると、管理釣り場の人が声をかけて来た。
「あっ!これ…ラインが太すぎますよ…」
「えっ!」
「ここは、もっと細いラインじゃないと、トラウトにバレちゃうんです」
「早く言ってよ!」
「それから、このスナップ(繋ぎの金属金具)は大きすぎですね!もっと、小さくないと、魚にニセモノだとバレるんですよ」
おいおい!我々は何度も通っているのに…。「教えるのが遅すぎるぞ!職員!」
そこで、ラインを細くして、スナップを一番小さいものにした。すると…。一投目から当たりがあった。
何だよ!簡単じゃね~か!職員の野郎!知ってる癖に「泳がせやがったな!魚だけに泳がせたのか!」
二人の心は、「トラウト」というより「トラウマ」だった。
桶田敬太郎君は、この文章の存在も知らなかったけど…。今、思えば読んでもらえば良かったと思う。落語に目覚めた、昭和の大学生のバンカラ・青春エッセイ!
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直木賞には程遠い、青春エッセイを皆様に…
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