澤田隆治さんの訃報が報道された。放送業界では誰もが知る大プロデューサーである。
子供の頃。毎週楽しみにしていた「てなもんや三度笠」(藤田まことさんのコメディー)のプロデューサーである。
私は挨拶程度の会話しかしたことがないが、心の中で「あああ~!あの、澤田さん、本物だ~!」と思ったものだ。
私は縁あって、夫婦漫才の「新山ひでや・やすこ」さんの台本を書かせて頂いたことがある。「夫婦川柳」という漫才で、夫婦が「川柳」でグチを言い合うというものだ。
この本の第一稿を渡した時、「ひでや・やすこ」さんは、すぐに寄席でかけてくれた。「ウケがよい」と言って頂いたので、ホット胸をなでおろした。
浅草の街を歩いていると「捕鯨船」(「浅草キッド」の歌詞にでる鯨屋)のオヤジさんが、ひでやさんに「今度、いいネタ作ったね~!あれはいいよ!」と、話しかけた時。ひでやさんが、横に居た私をさして「この、先生が書いて下さったんですよ!」と言ってくれた。
その時とてもテレたのを思い出す。
本当は、ウケるかどうか不安で仕方がなかったのだ。
私は漫才台本を書くのが初めてだったのだ。
数か月後。ひでや師匠から連絡があり「もう少しネタを長くしてもらえませんか」との依頼があった。
そこで、私は神社で夫婦が「川柳」の五七五でお願いをするシーンを追加した。やすこさんが「私はあなたと違ってセコイ事はしない」と、お賽銭に一万円(本物)を出しすが、やっぱりもったいなくて投げられない描写を入れてみた。
「ああ~!お賽銭はあげたいけど、指が!指が離れない~!」「あなたが、離さないだけでしょう!」といったやり取りだ。
この追加ネタを寄席でやったところ。「なかなかのウケ方」だったそうだ。これまた、私は胸をなでおろした。
しすし、数か月後。ひでやさんから連絡が有り。あのネタを見た澤田隆治さんが「本物のお札を使うのは生々しいのでやめた方が良い」と意見されたという。
それ以来「その部分」は上演されなくなった。
しかし、私はサスガは澤田さんだと思った。「客にウケれば何でもいいってものじゃない、お笑いには品も必要だ!」と、言いたかったのだと思う。
近年「笑いが起きれば」何でもOKという風潮もあるが…。やはり、伝説の名プロデューサーの考えは奥が深いのだ。
今や、新山ひでや師匠も故人となってしまった。残念だが、もう「夫婦川柳」は寄席で見られない。
そんな思い出がよみがえった今日の私である。
澤田さん、ご冥福をお祈り致します。そして「ご忠告下さって、本当にありがとうございました」。確かに、新山ひでや・やすこ さんは、品の良い夫婦漫才でした。
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