放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

柳家わさび師匠!凄い才能だ!

  柳家わさび師匠の評判が上がっている。元々、才能豊かな人なので予想はしていたが、今やグングン伸びる竹の子の勢いである。

 

 私が初めて「わさび」さんを生で観たのは、十年程前。吉祥寺での会だった。ゲストに大宮エリーさんを招いていた。開始と同時に「わさび」君は私服に帽子の「さかなクン」みたいなスタイルで何も話さず絵を描きだした。

 サイレントコメディーの様である。見ると、変な動きをしながら見事なタッチでゲストの似顔絵を描き終えた。そして、何も語らず去って行った。

 

 私は、この男が「わさび」君とも気づかず「ゲスト・パフォーマー」かと思って見ていた。

 

 その後、落語で登場して、私はやっと絵を描いたのが「わさび」君だと気づいた。「そうか、この子は絵も描けるんだ!」。

 私は何の知識もなく、チョットした評判をたよりに観に行ったのだ。

 

 この時。新作落語を披露したのだが、視点の新しさ、発想の豊かさに度肝を抜かれてしまった。

 「この若手、才能が凄いぞ!」この時の正直な感想である。

 

 私はすぐに、某番組の若手出演者としてプレゼンすることにした。たまたまなのか、熱意が通じたのかは分からないが「そこまで言うなら、一度、呼んでみよう」という話しになった。

 

 すると、「わさび」君は、いきなりの大活躍をしたのだ。独自の視点と発想がお客さんの心をつかんでしまった。

 

 プロデューサー「面白いね~!誰が見つけて来たの?」

 某作家「小林ですよ!」と言う会話が舞台袖で聞こえて来た。

 まるで自分がウケたように嬉しかったのを憶えている。

 

 この時は、まだ、わさび君は二つ目。世間的な知名度は少なかったと思う。

 

 それから、何年か後のことだ。

 

 私が昔、名古屋のテレビ番組で大変お世話になったAさんから連絡があった。「今日、東京に出てきているから、久しぶりに飲もう」と言うのだ。

 

 私は、この手の誘いはなるべく断らないことにしている。「何か面白いことが起こる予感」がするからだ。会議の日だったが、終わると同時に駆け足で飲み会へと向かった。

 

 指定の寿司屋さんへ行くと、Aさんに加え、懐かしいスタッフの姿もあった。昔話に花を咲かせて楽しんでいると…。Aさんが言った。

 「小林、今、何やってるの?」

 

 すると、そのタイミングで偶然にも私が構成していたBSの番組が店内のテレビで始まった。

 「あっ! 今、始まった、この番組やってます」

 「偶然だな~!」そこには、柳家わさび君の姿が映っていた。

 

 私「今、若手の落語家が面白いんですよ!」

 A「そうなのか?!」

 私「みんな絶対売れますよ!」

 

 その番組を見ながら、Aさんが言った。

 

 A「小林!名古屋で若手落語家呼んで、落語会やらないか?」

 「えっ! やりますよ! 計画あるんですか?」

 A「いや、今、思いついた! 企画書作ろう! 一度、名古屋へ来いよ!」

 

 後日。私は落語会の企画書作りの為に名古屋まで足を運んだ。

 

 そして、Aさんと一緒に、会のコンセプトや人選。企画書の売りの文句などを模索していた。

 

 A「いい男で落語の上手い若手って居ないの?」

 私「居ますよ! 今までは居なかったんですが、今は、居ます!」

 

 放送局は「イケメン」などのキャッチのある企画が通りやすい。「落語が上手い」だけでは、飛びついてくれないのだ。

 

 そこで、私は柳亭小痴楽、春風亭昇々、昔昔亭A太郎、桂三四郎、を推薦した。

 いずれも、落語の技術がしっかりとしたメンバーである。

 

 ところが、私個人的には「イケメン」というだけのくくりは嫌いである。

 「イケメンだけだと、人数が足りないので…対抗する「キャラクター・グループ」も作って、共演にしませんか?」と言ってみた。

 

 

 「キャラクター・グループ」には、実は若手の核となるメンバーがいた。柳家わさび、瀧川鯉八桂宮治春風亭昇也。そして、サブとして三遊亭わん丈。

 

 企画書に欲しかった「イケメン」を残しつつ、評判の若手を全て投入した凄いメンバーとなった(この時は全員が二つ目)。

 

 普通、この手の企画書は通らないものだが、この時は違った。若手の勢いとタイミングが合ったのだろう。

 この落語会の開催は、すぐに決定してしまった。

 

 この落語会は、私が選んだ二つ目のメンバーの中から、ローテーションで五人が出演。

 全員が一度は主任(とり)を務める会となった。出演者の順番も私が決めさせて頂いた。会場はホールだが、演題は発表しない寄席形式なので何が飛び出すか分からない。

 

 この会の一回目は満席となった。局はオープニング・アニメを制作して、出演者がアニメ化されて紹介される演出をしていた。来場者の評判も良く上々の立ち上がりだ。

 

 しかし、平日開催ということもあって集客に苦しむ時期があり、二年程で会は幕を閉じることになる。

 

 柳家わさび君の真打昇進の後、この落語会に出てもらいたかったが…。残念ながら、昇進直後に会は終了。真打としての出演は叶わなかった。

 

 そのことが、残念でならない。

 

 

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