放送業界のお話と落研と私的な思い出

放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

鋭い!直木賞作家、K山T夫先生の一言!

 私がかけだし放送作家の頃。師匠のМが構成するラジオ番組に、売れっ子放送作家のT先生とF先生がパーソナリティを務める「T君とF君」があった。

 

 ある日。М師匠が言った。

 「あいつら、俺のネタ全然やらないから、お前、適当に書いて届けろ!」

 「えっ! いいんですか?」

 「いいよ! どうせ、アドリブで喋るから、やらねえんだ!」

 

 この先生二人はアドリブで何時間でも話せる天才。作家のネタなど必要としないのだ。それでも、構成作家としてのプライドで、毎週「時代のネタ」への突っ込みなど、箇条書きでトークのアイディア原稿を出していたのだ。

 しかし、毎回ネタが使われなかった先生は、ついに嫌になって私にふったのである。

 

 「どうせやらない」とはいえ、新人の私としては真剣に考えてしまう。

 「季節のネタ」や「時代のトレンド」のネタを考えるしかないのだが、中々、良いものが出ない。私は悩んでしまった。

 そこで、ふと思ったのだが…。このネタは「М師匠の原稿をリライトしたもの」と嘘をついて持って行くので、私には責任が無い。

 こう思ったとたんに気が楽になった。「じゃあ、何でもいいや!」

 

 その時は、夏休み中だったので、こんなネタを書いてみた。

 T「夏休みって言えば、子供の頃、よくスイカドロボーしたよな」

 F「したした! 盗みすぎて部屋中スイカ!これがカボチャだったらハロウィンだよ!」

   T「スイカの種飲んじゃって、盲腸になるぞ! なんて言われたけど、あれ嘘なんだよな!」

 F「うそうそ、葡萄の種は盲腸になるけど、スイカはウンチで出る。だけど、時々頭の上から芽が出て大変だけどな」

 T「それが育って、頭の畑が豊作になったって言うじゃないか」

 F「それじぁ、落語だよ!「あたま山」じゃね~か!」

 

うろ覚えだが、多分…こんなネタを五本ぐらい書いて、スタジオへと届けた。師匠のМは他の仕事で現場は休んでいた。私が打ち合わせを見学していると…。

 

 この原稿を読んだ、二人の先生がゲシャゲシャと笑い出した。

 F「なんだよこれ! スイカドロボーなんてやらねえよ! 俺は東京育ちだっての!Мちゃんもいい加減な台本書いて、もう、やる気ないな!」

 

 すると、T先生が言った。

 T「しょうがねえな、Мちゃん!こんな、新人作家がやっつけで書いた様な台本持って来て!」と私の方を見て「ニヤッ!」と笑った。

 

 T先生は、私が書いたことを見透かしていたのだ。しかし、本番前に、この台本に二人が突っ込みまくって大爆笑となった。私はそれだけで嬉しかった。

 F「これ、酷いね~!放送できねえよ!クックックッ…おかしいな~!」

 T「斬新だね!Мちゃん、感覚が若いから!」T先生は、また、私を見て笑った。

 

 私の代筆は問題にはならず、打ち合わせの一服の清涼剤となった。

 

 そして、本番は一切持参した台本には触れず、アドリブトークが展開された。多分、この番組のディレクターも私が書いたことを気づいていたと思うが、先生達のトークの面白さでチャラになった感じだった。

 

 そして、数回同じパターンで代筆をしたが、ある日、М先生は私にネタを書かせることをやめた。T先生が「弟子に書かせちゃ、ダメだよ!」と助言したのかも知れない。

 

 真相は分からないままだが、K山T夫先生の私を見る優しい目と「ニヤッ」とした顔は今も忘れない。

 

 放送作家としてもトップで直木賞作家のT先生とギャグの天才F先生に、笑って頂いただけで、当時の私には至福の瞬間だった。

 

 今回、イニシャルの意味は無かったような気がする…。

 

 

 

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