放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

東海大落研・憧れた先輩・レジェンド!

 昭和55年。東海大学落語研究部に入部した私に衝撃を与えたのは、憧れの先輩達である。2年先輩の頭下位切奴(とうかいてい・きりど・現・春風亭昇太師匠)さん、実志(じっし)さん、二代目・甘奈豆さんは勿論だが、実は同じぐらいリスペクトしている先輩が沢山いる。

 

 そこで、手前みそだが、わが校のレジェンドについて記すことにした。

 

 まずは、東海大落研の「中興の祖」といわれる伝説のレジェンドの思い出から。

 

 私より8年先輩に初代・独坊(どくぼう・12期委員長)さんという圧倒的な存在がいた。この12期には落語家の林家錦平師匠もいる。

 

 富山の進学校出身で、模試では県内のランキングにも入ったことがあるそうだ。

 うちのクラブでは伝統的に、進学校に進んだが遊んでしまった地頭の良い先輩にレジェンドが多い。

 この先輩は落語も面白かったが、何より飲み会や日常生活での会話が全て面白い。人としての魅力があるのだ。

 

 大学の文化部連合の他のクラブにも人気があり、当時の話を聞くと、各クラブの後輩が「今日、独坊さんに話しかけてもらえた!」と喜ぶ程だったという。

 もはや、ジャニーズのアイドルみたいな存在だ。

 

 当時、UFO超心理研究会に在籍していた、後の横溝正史賞作家・井上尚登(故人)さんによると「独坊さんと一緒の飲み会に参加するのが夢だった」という。

 

 あるOBによると、独坊さんはドラマ「俺たちの旅」のカースケ(中村雅俊)の様だったそうだ(顔は伊丹幸雄だが)。

 

 この先輩は大学の大スターだったために、文化祭の実行委員長を務めた。そして、文化祭にストリップを呼ぶと宣言して実行してしまった。

 私は当時のフィルム(多分、映画研究会所有)を見たことがあるが…。独坊さんが文化祭実行委員長として「文化祭…。何故ストリップかって?シャレだよ!シャレ!シャレに決まってるだろう」とコメント。すると、学生達が「おお~!」と大喝采している。

 まるでヒットラーの演説の様であり、何を言ってもウケるジャニーズの大物アイドルの反応である。

 

 「落研だから落語が上手ければ良い」と言ったレベルを超えた、存在自体がレジェンドだったのだ。

 

 部室に残るオープンリールのテープに「ジャズ落語」という音源がある。

 これは、独坊さんと、もう一人のレジェンド初代・甘奈豆(14期・委員長・文化祭の実行委員長も務めた)さんがジャズ研究会とコラボして会を開いた時のものだ。

 この会は学内ではなく、ホールを借りた大きなイベントだった。ジャズの間に落語が二席入る構成で、なんともオシャレな会だ。

 クラブの定例の会と別に個人的に大きな会を開くのは容易ではない。文化部連合でいかに大きな存在だったかが伺える。

 この時のポスターが部室に残されていたが、デザインもかなりオシャレなものだった。

 

 この先輩・独坊さんは大学に8年間いた強者だ!しかも、8年いて中退するという落研最高峰の卒業となった。

 

 つまり、私はこの先輩と入れ違い入学。学生時代の接点はない。しかし、OBとして何度か富山から遊びに来ると、圧倒的な存在感で爆笑をとっていた。

 

 私が一年の時。学内の落語会に訪れた独坊さんが着物を出した。「俺、出るよ!」

 

 私達一年生はどよめいた! 初めてレジェンドの落語が観られるのだ。

 

 高座に登場した独坊さんは、古典落語の「おし(漢字が出ませんでした)の釣り」を始めた。噺は適当にごまかしながらやっていたが、存在感とお客のひきつけが凄い。とにかく、みんなが身を乗り出して聞いている。

 とても表現が難しいが、これは「上手さ」や「面白さ」を超えたカリスマ的な魅力である。

 

 この時の噺の中で覚えているギャグが一つある。

 兄貴「そう言う時は、相手の予想のつかないことを言うんだ!」

 与太郎「そんなこと言えら~!」

 兄貴「何ていう?」

 与太郎「ハエハエ!カカカ!キンチョール!」

 

 客席が沸いた! この「ハエハエ!カカカ!キンチョール!」は、当時のCМの文句。三遊亭円丈師匠と阪神タイガースの掛布選手が出演して話題となっていた。

 

 この先輩は、現代の流行を取り入れる時代感覚があるからレジェンドになったのだと思う。

 

 その日の飲み会は、やはり、独坊さんのワンマンショーだった。小田急相模原の焼き鳥屋「秀吉」(現在は無い)が爆笑に包まれていた。

 この人が来ると、あの、切奴さんも「聞き役」に回ってしまう。

 

 散々盛り上げた独坊さんは、誰よりも先に酔いつぶれて店で寝てしまった。

 聞くと、いつもそのパターンで酒を浴びる様に豪快に飲んで騒いで、誰よりも先に寝てしまうそうだ。

 

 今、思い出したが…。当時、流行ったルービックキューブ落研で初めて揃えたのも独坊さんだった。レジェンドはやはりどこか違うのだ(実はオモチャ屋でアンチョコを売っていたらしい…)。

 

 

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