放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

怪しいセールスマン!

 私が世田谷区のとある女子高裏に住んでいた頃。アパートで仕事をしていると、突然、ベランダから人が訪ねて来た。

 「いい天気ですね~!」

 「えっ!」

 

 私はアパートの一階に住んでいたが…。玄関とは逆側のベランダから人が来ることは無い。驚いて見ると二十代後半位のラフな格好をした男がニコニコ笑っている。

 

 「何? あんた、なんでベランダから来るの?」

 「いえ!通りがかったんで!」

 

 子供の頃。静岡の田舎のお婆ちゃんの家では、近所の人が縁側から訪ねることはあったが、世田谷ではありえないことだ。

 しかも、近所の人ではない(隣の人の顔も名前も知らなかったが…)。

 

 私「ダメだよ!ベランダから来ちゃあ!」

 男「布団汚れてませんか?」

 私「は~~?」

 男「布団のクリーニングしますよ!」

 

 聞くと、この男は、CМでもおなじみの企業「☓八」の営業で布団のクリーニングをしているという。

 

 私「いいよ!そんなの!高いだろう?」

 男「それが、普通は一万円以上する完全なクリーニングを、今、三千円でやってるんです」

 

 私の布団は大学一年の時に親に持たせてもらったものだった。つまり、八年ぐらい使っていたのだ。

 

 私「三千円なら、出してやってもいいけど…」

 男「ありがとうございます」

 

 男は注文書を書き始めた、そして、途中で…

 

 男「あの~!布団のクリーニングは新しい布団を買ってくれた人のみ三千円なんです。布団を買いませんか?」

 私「おいおい!新しい布団買うんならクリーニングなんかしないで古いの捨てるよ!」

 男「あっ!じゃあ、良い布団があるんですよ!」

 私「こらこら!話聞いてるのか?布団は買わない!お前は三千円でクリーニングできると言ったんだから、責任もって三千円でクリーニングしろよ!」

 男「クリーニングだけだと一万二千円です」

 私「それ、詐欺行為だぞ!天下の☓八が詐欺まがいの営業するのか?」

 男「いえ!そんな言いがかりされても…」

 私「いいがかりじゃね~よ!足りない金は、お前のポケットマネーで出せ!」

 男「それは無理です」

 私「ベランダから来たくせに、文句言うなよ!名前は?住所は?」

 男「分かりました! 帰ります!」

 

 男は不機嫌に帰って行った。

 

 私は思った! また一つ、ネタが出来た! いつか使えるかもしれない。

 

 三十五年程たった今、このコラムでやっと使えた。

 

 しかし、あの男が本当に天下の「☓八」の営業マンだったかどうかは謎である。

 

 後日、アパートの私のポストに「バカ」と落書きされていた。ポストは私の物ではないので、別に気にならない。そのままにしておいた。

 

 私は今も「バカ」という文字を見るとベランダの営業マンを思い出す。あいつ、今、生きてるかな~?

 

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