放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

有名人の子供達!

 私は、昔から有名人や大物政治家・財界人の子供たちが羨ましいと思っていた。これは田舎者でナマケモノの発想のようだ。

 

 私は子供の頃から、苦労や努力をさけて生きて来た。それだけに、親のコネで何でもできる「若大将シリーズ」の青大将(田中邦衛)の様な人に憧れていた。

 もう少し新しい例では「こち亀」の麗子や中川の様な存在に憧れていたのだ。

 

 放送作家として、大物コメディアンKさんのラジオ番組を担当していた時。新人ディレクターのTさんが居た。彼はとても優秀で臨機応変な対応が出来る人だ。

 まだ、大学を出たてだが、落ち着いた話し方で先輩にも意見を言える人だった。

 

 数か月一緒に仕事をした頃。Tさんはお正月映画として有名な国民的俳優の息子さんだと聞いた。

 

 本人は親の七光りが嫌で、素性を隠して局の入社試験を受けたそうである。彼は実力で入社したかったようだ。

 上司たちは入社式にいきなりお父さんが現れて、皆「はやく言ってくれれば!」と、恐縮したそうだ。

 

 コネに憧れた私とは違い、本当のご子息は親の世話になりたくない様なのだ。

 

 私は番組の打ち上げの時。カラオケボックスでお父さんの映画のテーマ曲を入れて、Tさんに歌わせたことがある。

 Tさんは子供の頃から歌いなれているようで、決まり台詞まで入れて見事に盛り上げてくれた。

 

 この数か月後の事。Tさんが無断で会社を休んだ。番組スタッフは何故だろう?と皆首をかしげていた。

 

 数日後。Tさんの「お父さんが亡くなっていた」との報道があり。日本中の話題となった。近親者だけで埋葬するまでマスコミには未発表だったのだ。

 

 私がTさんにカラオケを歌わせた時。もう、お父さんの容態は悪かった筈だ。その時、私は酔っぱらって「次の映画のロケ地はどこ?」などと、酷い質問までしている。

 当人は笑顔で「次の作品はありません」と、言っていたが、酔った私は何も気づかず「そうなの!」と言っただけだった。

 まったく申し訳ないことを聞いてしまったものだ。

 

話は変わるが、私より後輩の放送作家に、有名な俳優で声優さんの息子Yさんがいる。またもカラオケだが、私がアニメ「〇〇〇三世」のテーマ曲をかってに入れると素直に歌ってくれた。やはり、子供の頃から仲間に唄わされて慣れているそうだ。

 

 このYさんも、父親のことは話したがらない。私なら新しい人に会うたびに「私、〇〇の息子なんです」と言って「七光り」を期待するところだが、やはり、親を名刺代わりにはしたくないのだそうだ。

 

 私の親は専売公社勤務の職工だったが、業界では何の売りにもならないので嫌だった。しかし、有名人のご子息に言わせると「普通で羨ましい」と言うのだ。

 

 別のラジオ番組の話だが、深夜ラジオに私を抜擢してくれたディレクターのHさんの結婚式に呼ばれたことがあった。

 結婚式会場に行って私は驚いてしまった。ステージがあり生バンドの楽器がズラリと並んでいるのだ。

 

 余興に登場したのは、あの、キングトーンズで「グッド・ナイト・ベイビー」を唄っていた。そして、キングトーンズは、Hさんのお爺さんと親しいというのだ。

 

 その後、登場したお爺さんは歌って踊ってスイングしまくり。このお爺さんは、芝居や映画のモデルにもなった伝説のミュージシャンだった。

 

 格好良すぎるぜ!Hさん!

 

 Hさんは、そんな家系の事は私には一言も言ったことがなかった。パーソナリティも含めてよく六本木などで飲んでいたが、まったく、そぶりをみせなかったのだ。

 

 やっぱり、本当に家系が良い人は「自分では言いたくない」のだと思う。

 

 そう言えば、いつも奇跡を起こす女性放送作家のAさんも、ある文豪Мの親戚だが、分かったのは何年も仕事した後だった(ブログを遡ってお読みください)。

 

 それでも、私は生まれ変わったら有名人や政治家・財界人の家系に生まれたい! と、今でも思っている。

 

 「親のコネ使ってみて~!」「七光りは嫌や!なんて言ってみて~!」「楽して暮らして~!」

 

 凡人の心の叫びである。

 

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