放送業界のお話と落研と私的な思い出

放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

「怪物現る!業界は女性に優しいのか?」

  私がМさんの弟子になって放送作家の修行を始めて一年位の頃。突然、師匠のМが若い女性を連れて事務所に現れた。

 

 「こちら、作家志望のYさん! 今日からこの事務所で働いてもらうことにしたから。仲良くやって、こっちは、小林!」
 「はじめまして!」

 

 それだけ告げると、師匠Мは事務所を出て行った。すると、事務所の電話が鳴ったので、私が出て師匠への伝言などをメモして電話を切った。

 すると、Yさんはいきなり強い口調で言った。

 

 「チョット! 小林君! 今の電話の出方は無いわ!」

 えっ…。小林君? Yは年下でこの事務所でも後輩。「君」と呼ぶのはオカシイ。しかし、あまりに強い口調なので聞いていると…。


 「電話のコールは三回以内にとらんといかんわ! そんなの常識だわ!」
 Yさんは激しい名古屋弁だった。

 

 腹が立ったが、社会人経験の無い私は、少し勉強になった。たしかに、電話はなるべく早くとった方が良い。
 しかし、いきなり「後輩」が「先輩風」とは、人間としては失格だ。まともにクラブ活動をしたものならありえない。

 聞くと、このYさんはバンドをやっていたらしい。かなりヤンチャな学生時代を過ごしていた様だ。本人曰く、家庭は大きな事業をしている資産家でお嬢様らしい。

 

 それ以来、私は事務所で毎日、Yの小言を聞くことに成る。

 しかも、「コーヒー豆買って来て」「原稿用紙買って来て」などとお使いを私に言いつける。
 「自分で行けば!」と言うと「私は電話受けないといかんがん!」と名古屋弁で威圧してくる。

 お使いを終えて帰ると、Yさんがリラックスして電話していた。友達口調でバカ笑いしている。それも30分も40分も話している。

 やっと電話を切ったので「今の電話は?」と聞くと「友達に決まってるがん! 仕事の電話なんてどうせ、たいしてこないがん!」
 もうメチャクチャな理論である。

 

 師匠Мが「事務所に電話したら長く話中だったが、何かあったのか?」と聞いたので「知りません」と答えておいた。Yの行為は「悪」だが、私は告げ口はしないのだ。どうせ、近々気づかれて問題になる筈だ。

 

 私は師匠Мから毎月、固定給をもらっていたが、ある日。私より新人のYさんの方が給料が二万円多いことに気づいてしまった。流石に、私はМ師匠に聞いてみた。

 「何で、僕よりYさんの方がギャラが高いんですか?」
 「だって、女の子は風呂付き住まないとダメだろう」

 

 この理論は良く分からない。Yはこの時点では電話受けしかしていない。

 私は少ないながら何本かギャラの出る仕事をしていたし、師匠の車の運転もしていた。電話受けもするし、Yに命じられて使いっ走りまでしているのだ。

 業界は理不尽だ! しかも、女に甘いことを知った。

 

 ある日。М師匠が大阪の大物作家Tに頼んで、Yちゃんにラジオ番組を紹介させたと言う話を聞いた。

 大物Tは私に「ラジオ、やらせるよ」と言って、実現しなかった人物だ。Yさんは喜んでいたが、私は心の中で「どうせ嘘なのに…」と思っていた。

 

 すると、一か月後。Yさんは日本を代表する深夜ラジオ番組の作家となった。しかも、超大物アーティストの番組である。
 「おいおい! 今度は本当なのかよ!」

 

 やはり、業界は女性に甘いのかも知れない。しかも、真面目な者よりずるがしこい奴に優しいようだ。

 

 Yさんは一時期、何本か番組をやっていたが、数年で「田舎に帰る!」と言って、事務所を辞めていった。

 

 今は何をしているか分からないが、あの生命力なら何をしても生きて行けるだろう?

 

 私は今、電話が三回鳴っても出ない。そんなことはどうでも良いからだ。

 

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