昔から「ところ変われば品かわる」と言う言葉があるが、新人放送作家は局による言葉の違いに悩まされる。
私が初めて赤坂のラジオ局で仕事した時。キューシートと呼ばれる進行表に、SS~と書かれている。新人の私が初めて見た記号だ。私は素直なので恥を承知で聞いてみた。
「すいません、SS~って何ですか?」
「サウンドステッカー! CМから番組に入る時「〇〇の▼▼▼ギャング~!」なんて音がでるでしょう。あれですよ! 知らないの?」
これは、私がよく行っていた局で言うJ~(ジンクル)だと分かった。
こういった、細かい記号や呼び名は局や番組、スタッフによって違う場合がある。この例で言うと「SS~」は半蔵門のFМでも使われている。
放送業界は「職人」や「芸人」の世界と似ていて、聞かないと何も教えてくれない。「この局は初めてです」と伝えていても、こんなことが起こるのだ。
河田町のテレビ局で朝の番組を初めてやった時。М~(タッチ)と書かれていた。
「あの…タッチって何ですか?」
「知らないの? タイトルの前とか場面変わる時に音出るでしょう? あれだよ!」
これは、私がやっていた番組ではМ~(アタック)と書いていた。
ひょっとすると、同じ局の中でも番組独自の「表し方」があるのかも知れない。新人は、その都度覚えるしかないのだ(何故言葉を統一しないのかは謎)。
憶測だが、女子高生が自分たちだけの言葉を作る様に業界も「俺達のグループはこう」みたいな派閥があったのかも知れない。
先程のSS~の番組をやった時。スタッフがキューシートの紙を渡して「お願いします」と言った。私は驚いてしまった。私が行っていた局ではキューシート(曲やコーナーのタイムを書いた進行表)はディレクターが書くものだったからだ。
「これ、どうするんですか? まさか曲を選ぶの?」
「ここに、台本書いて下さい」
「えええ~!」
これは、衝撃だった。私はいつも局の原稿用紙にラジオの台本を書いていたからだ。他の作家もそうしていたので、当たり前だと思っていたのだ。
この局では、キューシートの小さなすき間に、コーナーの「説明」や「簡単な進行台本」を書き込むらしい。
おかげで「凄く小さな字」(米粒に書き込む様な)で書くこととなった。さらに、無駄なギャグははぶいて大切な「ルール説明」だけに絞って書くこととなる。
多分、ギャグはタレントのアドリブに任せるスタイルなのだ。
これは、どちらの局の方法が正解かは分からない。どちらも「人気番組」はあるからだ。
放送には、オープニングから全部書く朗読スタイルのモノから、「お知らせ」以外全部アドリブという番組もある。正解のスタイルはないのだ。
聞いた話では、関西のラジオでは台本はほとんど無いと聞く。一度、私が関西のラジォをやった時は、アイドルの番組だったので台本があった。これは異例で、関西のお笑い系のタレントさんは、ほとんど台本無しの様だ(あっても無視して話してしまう)。
東京のラジオに進出した、上方落語のT師匠は東京のラジオの台本の厚さに驚いたそうだ。「東京は楽やな~!」と言ったとか? 言わないとか?
作家の立場で言うと「関西が羨ましい」気もする。
こんなことを書いていて、ふと!思う!
春風亭一之輔師匠の「サンデーフリッカーズ」(JFN)はどうだろう? どちらかと言うと、関西よりの作りである。
今気づいたが、この番組「キューシート」が無い。進行台本だけである。
今日はオープニングで何を言い出すのか? スタッフも楽しみである。
「いけないことを言ってしまうのでは?」と、ハラハラすることもしばしある。
日曜の朝に「ハラハラ」したい皆さんは、是非一度お聴き下さい。
ピンポ~ン! 今、これを書いていると荷物が届いた。一之輔の推薦図書「まんが道」全巻が届いた。先日、ヤフーオークションで落札したものだ。
これから読むのに忙しいので、コラムは少し休むかもしれない。
そろそろ、休んでいいよね?!
SS~
М~(「夏休み」/吉田拓郎)
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