放送業界のお話と落研と私的な思い出

放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

放送業界の嘘つき達!

 私が新人放送作家の頃。師匠のМから「六本木の料理屋へ来い」と連絡があった。事務所の近くなので、すぐに訪ねると…。

 そこには、師匠と大阪の超大物放送作家Tが飲んで居た。TさんはМをヨイショしていて「大阪のナンバーワン作家の収入は東京だと300番ですよ。Мさんはベンツ乗ってるでしょう。大阪のトップは国産車です」。

 

 Мは上機嫌だった。私を紹介する時、Tさんに「こいつ、うちの小林なんだけど…。T!何か仕事やってくれよ」するとTさんは「分かりました!今度、ラジオで女性ロックバンドSの番組始まるんで、言っておきますよ。大丈夫! 誰か探してって頼まれてますから」。

 何とも簡単に仕事が決まってしまった。

 

 私は翌日。女性ロックバンドSのアルバムを買うことにした。胸にバラのタトゥーがあるカッコいいヴォーカルのバンドだった。

 私はワクワクして、Tさんの連絡を待っていた。

 

 その一か月後。私が某ラジオ局の三階のロビーにいると、女性ロックバンドSの収録が行われていた。そこに居た放送作家は、音楽の評論でも有名な大御所Wさんだった。

 Wさんは私に「こんなギャラ安い番組初めてで驚いたよ!」と言っていた。

 

 Tさんからの連絡が来ることはなかった。

 

 また、ある日。師匠のМについて某ラジオ局に行くと、Мは若いディレクターに

 「こいつに、そろそろ番組やらせてくれよ!」と言った。すると、DのKさんが

 「今度、深夜にKさんの番組やるんで頼むよ!」

 簡単に仕事が決まってしまった。

 

 チョット、心が震えた。Kさんとは日本を代表するミュージシャンだったからだ。新人で見習いの私が、あの、Kさんの番組をやるなんて夢の様な話である。その日は嬉しくて眠れなかった。

 

 数日後。某ラジオ局の3階ロビーに行くと、端のスタジオで誰かが収録をしている。覗くと、あのKさんだ。スタジオには、私が尊敬する同年の作家Sさんが居た。ディレクターは勿論、「私にやらせてくれる」と言ったKさんである。

 

 私はやっと悟った。業界人というのは「その場限り」の「適当」な会話をするのだ。私の師匠のМは、大御所の作家だった上に、祖父が大阪のとある団体の組長だったという家柄。

 みんな、怖がって、その場では話を合わせているだけだったのだ。

 

 そう言えば、ある先輩作家は雑誌のグラビアをめくりながら「この女、昔、つき合ったことがあるよ」「この女もやったよ」等と、平気で嘘をついていた。。

 

 私がレギュラーを持ち、生活が安定した頃。「喋るコンピューターが電話で会話してくれるサービス」の会議に出ていたことがある。

 某テレビ局の大物社員が持ってきた話で、世界の最先端技術を持つ天才エンジニアが手掛けるという。

 

 このシステムは、どんな質問をしても「人間の様に答えられる」というのだ。我々は毎週会議を行い、プログラムの設定をいくつも考案していた。この開発が世に出れば、日本中を驚かせるビッグビジネスになると言うのだ。

 

 「いったいどんなシステムなんですか?」と聞くと

 「全ての会話を録音してコンピューターで瞬時に出す」と言う。

 チョット、拍子抜けである。考えて答えるコンピューターなら画期的だが、録音を出すのでは「喋るオモチャの人形」と大して変わらない。会話のバリエーションが多いだけだ。

 

 数か月後。局の大物社員から連絡があった。

 あの、大物エンジニアは詐欺師で金を持って逃げたという。我々は数か月間毎週アイディアを出してノーギャラとなった。大物社員が一度謝罪の飲み会をしてくれたが、「私も被害者だから」と言うことで、何もなく終わってしまった。

 

 また、「放送作家の教室」をパソコンのリモートでやると言う会議に出ていたこともある。

 この時も、毎週集まって、教科書まで製作している。これは、ちょっとした特番を一人で書くぐらいの原稿を書いたと思う。

 ところが、予算を出す自治体が「生徒の中から優秀な者はプロとして雇用する確約」が無いと金は出せないと言うのだ。

 

 我々は、会議の初日から「全員プロになれない可能性はある」と主張していた。当たり前の話である。「医学部」だって卒業しても「国家試験」に合格しないと医師免許はもらえない。弁護士もそうである。

 勿論、放送作家に資格試験は無いが、仕事がくるかどうかは本人の力量である。

 今更、その条件で金を出せないというのはおかしい。詐欺事件である。

 

 私は今、業界人の話は信じないことにしている。幸い我々作家は詐欺にあってもアイディアには仕入れ金が無い。損失は紙とインク代だけである。どんなに騙されても借金が出来ない仕事なのだ。

 

 これは、唯一ありがたいことだ。

 

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