(続きですので、前回を振り返ってお読みください)
1年後輩に、頭下位亭雷念(とうかていて らいねん)君という男が居た。同期に柳念(りゅうねん)君が居て、並ぶと「来年、留年」となる。柳念君は留年でなく中退してクラブを去った。
雷念君は私と同じ静岡県出身。一浪なので同じ歳である。
聞くと、高校受験で無理して浜松の進学校を受けて不合格。併願の私立に入ったそうだ。格下の学校に入ったので「高校時代は成績が良かった」と、当人は語っている。
しかし、一浪なので説得力は無い。話を聞いていると、私と同じ与太郎グループにしか思えないからだ。
雷念君は入試の時、英語の試験で「オズの魔法使い」が出たという。
雷念君は英語は分からなかったが「オズの魔法使い」は知っているので、なんとなく、訳が分かって合格したという。もはや、英語ではなく国語の試験である。やはり与太郎だ。
雷念君は、正座した後走る時、足をくじいて骨折すると言う事件を起こした。落研始まって以来のアクシデントである。しかも、アロエを貼って骨折を直していた。現代人とは思えない行為に、一同大笑いして見ていた。どう考えてもシップの方が良いと思うのだが…。
そんな雷念君の下宿へ行くと、弟が居た。聞くと、全寮制の厳しい高校が嫌で、脱走して逃げて来たというのだ。面白いので、しばらく落研と一緒に行動することになった。この弟は柔道の山下泰裕さんと似ていたので、柔道着を着せて大喜利の落ちに登場させたりしていた。
高校を逃げ出して元気の無かった彼だが、落研と共に生活することで、その目は輝き、青春を謳歌している様に見えた。高校より大切な我々の人情と笑いに触れたからだ(ということにしておく)。
雷念君は、良い兄貴だった。
今、この兄弟は浜名湖で「海賀荘」という民宿旅館を経営している。ここは、生簀から取り立ての魚介を出すが、やたらと料金が安い。隠れ家の宿としてお勧めだ。
さらに、1年後輩に独尻(どっしり)君という男が居た。名前の通り、どっしりした体で、ケムクジャラ。アイヌの村に居る人に似ている。
田舎は沖縄で、名門・首里高校出身だ。首里高校は、沖縄がまだアメリカだった頃、甲子園に出て砂を持ち帰ったら空港で没収された伝説の高校だ。
独尻君は幼少の頃、パスポートが無いと本州には渡れなかったそうだ。
彼が魚屋のバイトで貰った秋刀魚をフライパンで焼いているのを見たことがある。網で焼いた方が良いと思うのだが。「買うのがモッタイナイから」と言っていた。
また、ツマミ無しで部室にある日本酒を飲んでいた。落語会をやる度に、他の大学が一升瓶を持って挨拶に来るのが落研の決まりだった。
アパートは汚く、脱いだ服が散乱していた。沖縄出身なのに三線は弾けず、島唄を唄ってみせたこともない。聞くと「僕は、ロックの方だから」と言っていたが、ギターも弾けない。沖縄でも変わり者だったのかも知れない。
独尻君は沖縄に帰り、結婚した。部員は皆、沖縄まで行って結婚式に出席したが、独尻君が、部員の結婚式に来ることはなかった。
沖縄の人の行動は、チョット面白い!
他の沖縄の皆さんはどうなのだろうか?
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