東海大学落研OB・脚本家の穴吹一郎君のエピソードを思い出したので、もう、一つ。
彼がまだ無名の劇団主催の頃。小田急線・経堂駅近くの居酒屋さんで、春風亭昇太さんと私で飲むことに成った。
「穴吹君も呼ぼうか!」
昇太さんが電話すると穴吹君は芝居の稽古中で、終わったら参加すると言う。
我々がバカな話をしながら飲んで居ると…。昇太さんの携帯が鳴った。穴吹君からだ。
「あの…、劇団員も連れて行っていいですか?」
「良いよ!」
一時間後。穴吹君は劇団員を十五人ぐらいつれて居酒屋にやってきた。しかも、若い劇団員は「腹ペコなんです!」と言っている。
そこで、昇太さんは……。
「分かった! お母さん、まずは、「鰻重」を全員分下さい!」
昇太さんは、まさか、こんなに連れて来るとは思わなかったはずである。
穴吹君は大物だけあって「空気が読めなかった」のだ。しかし、来たものはしょうがない。文句ひとつ言わずに「奢る」のが春風亭の美学なのだ。
この居酒屋は、元々は鰻屋さんだった店である。当然、鰻重はそれなりの値段である。しかし、東海落研の先輩は後輩に「金を出させない」のだ。
昇太さんは笑顔で、劇団員達を突っ込みながら場を盛り上げて帰って行った。それ以来、穴吹君を誘うことは無かったとの噂もあるが、定かではない。
そして、私も奢ってもらって帰った。
春風亭は小さな神である!
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