放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

千歳船橋駅で柳好師匠…からの、まさかのウルトラマン。

f:id:bakodayo-basu3:20200719202405j:plain

ウルトラアイ


 世田谷に住んでいる時。小田急線・千歳船橋駅を降りると、春風亭柳好師匠が居た。

 「ひゃ~!はっは~! 小林さん、一軒行きませんか?」

 

 柳好さんの行きつけの店は、いつも、何かが起きる。私に断る理由は無い。今日は、いったい何があるのだろう?

 

 「小林さん、バラックみたいな一軒家の店行きましょう!」

 

 今は駅前再開発で無くなってしまったが、その当時、千歳船橋駅近くに、驚く様なボロボロの一軒家の店があった。私も、存在は知っていたが怖くて入ることが出来なかった店だ。外観を分かりやすく言うと「明日のジョー」に登場する涙橋の下に造ったバラック「丹下拳闘クラブ」を居酒屋にした様な感じだった。丹下段平が手造りで建てた、あの建物である。

 

 入ると、刺身や煮魚等が旨いチャントした店で、柳好さんが知り合いの常連さんと挨拶してカウンターに座った。

 「小林さん、こちら、菊池さんと言って、役者さんです」

 

 紹介された菊池さんは静かな中にも何か蘊蓄のある会話をする、優しいオジサンだった。飲んで話していると…。

 「ひゃ~っ! ひゃっひゃ~! 菊池さんはウルトラマンだったんですよ」

 「えっ! そうなんですか?」

 「昔、チョットね…」

 まるで子供の様な会話である。

 

 聞くと「帰って来たウルトラマン」のスーツアクター。つまり、中に入っていた人なのだ。その方は「きくち英一」さんだった。

 

 英一さんは、スーツアクターの他にも、ウルトラシリーズの色々な場面で出演している。

 

 その店に、ウルトラシリーズの解説本があったので、手に取って見た。すると、英一さんは「ウルトラセブン」にも入ったことがあると書かれている。

 「えっ! ウルトラセブンにも入ったんですか?」

 「おお、一回だけね! 「ウルトラ警備隊西へ!」」

 「えええ~!」

 「「ウルトラ警備隊西へ!」と言えば、前後半ある大作で、ペダン星人が作った宇宙最強のロボット・キングジョーの回。私が子供の頃、もっとも好きだった作品である」

 

 スーツアクターにとって、最も怖いのは水に入るシーンだと聞いたことがある。水がスーツの中に浸水するので息が出来なくなるのだ。

 この、キングジョーとの戦いは海の中での死闘がある過酷な回である。しかも、アクションは完璧で、いつもと違う人間が入っているとは、まったく気づかなかった。子供心にワクワクして、放送を見た夜は興奮で中々寝られなかった程だ。

 

 柳好さんの行く店は、やはり常連客も違う! 来てよかったと心から思える瞬間だった。

 

 後日、私は、以前から行こうと思っていた藤沢の喫茶店ジョリーシャポー」を訪れた。ここは、「ウルトラセブン」のモロボシ・ダン森次晃嗣)さんのお店である。

 森次さんの作るオムライスを食べ、物販コーナーで「ウルトラアイ」まで買ってしまった。きくち英一さんと会ったことで、子供心に火がついてしまったのだ。

 

 ある日。経堂駅近くの焼き鳥屋「関所」という店で、柳好さんの独演会があったので、観に行くことにした。この店は、変わっていて本職は畳屋さんだが、会社帰りの常連さんの為だけに、夕方から2時間程営業するらしい。

 流石は柳好さん、やはり普通の店ではない。柳好さんは定期的に独演会を開いているらしい。

 

 ビールを飲みながら、待っていると。前座として、あの、きくち英一さんが登場した。

 「私は、学生時代、日大芸術学部落研でして、光亭源氏と申します」

 「おおお~!」

 

 きくち英一さんは、春風亭一之輔さんの落研の大先輩だったのだ。しっかりした古典の口調で、小噺をいくつかやって高座を降りたが、お客さんはのウケは良く、その上手さは充分に伝わるものだった。

 

 私は何だか嬉しくなって、その日は酒が進んでしまった。会の後、飲み会があり、最後に「きくち」さんが言った。

 「では、最後は、円谷プロの三本締めを…」

 どうやら、普通の三本締めではない様なのだ。

 「みなさん、ウルトラマン風に「ショワ!ショワ!ショワ!」で行きます!

 一同「おお~!」 

 それが円谷の伝統だったのか、勉強になる。

 

 「よーお! ショワ!ショワ!ショワ! ショワ!ショワ!ショワ! ショワ!ショワ!ショワ! ショワ! ショワ!ショワ!ショワ! ショワ!ショワ!ショワ! ショワ!ショワ!ショワ! ショワ! ショワ!ショワ!ショワ! ショワ!ショワ!ショワ! ショワ!ショワ!ショワ! ショワ!」

一同(大喜びの拍手)「ひゃ~!ひゃっひゃ~!」

 

 この日は、嬉しくて、朝方まで飲んでしまった。

 

 そして「西の空に明けの明星が輝く頃。一人の酔っ払いが家に帰った! それが僕だった」(「ウルトラセブン」最終回にダンがアンヌに言った言葉風・自分で調べて下さい)

 

 う~ん! タダの特撮ヲタクの様なコラムになってしまった。今日はアクセスが少なそうだ!

おしまい!「ジョワ~!」

 

 

こちらは評判のエッセイ。安価なので気軽にお読み下さい。

宣伝。「嗚呼!青春の大根梁山泊東海大学・僕と落研の物語~」上・中・下

      ↓ 

 https://note.com/bakodayo1874basu