放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

夏祭りの悲劇!

 気温が上がると、いつも、子供の頃の夏祭りを思い出す。

 静岡県磐田市で育った私は、毎年、天竜川の花火大会に出かけていた。お婆ちゃんの家が天竜川近くにあったからだ。

 

 お祭りは磐田側から天竜川を渡った浜松側のものだが、上がる花火の見える距離は変わらない。この土地は、広沢虎造浪曲清水の次郎長伝」で石松を騙したうえ殺害した都鳥三兄弟の地元である(架空の物語だが)。

 

 いつもは磐田側から花火を見ていた我々だが、この日は、橋を徒歩で渡って本拠地の祭りを楽しむことにした。向こうに渡ると露店などがあって、お祭りの雰囲気が楽しめるのだ。カップルには暗い磐田側の河川敷が人気だが、家族には賑やかな方が良い。

 

 オジサン、オバサン、従妹、我が家の両親と兄と私…。連れだって浜松側で花火を楽しんだ。

 その帰りがけのことだ。多分、私が「アイスクリーム食べたい」と言ったのだろう。

 母が、全員分のアイスを買って、食べながら歩いて帰ることになった。すると、兄が叫んだ! 「当たった!」。

 そう、アイスの棒に当たりが出たのだ。私もよく見ると「当たった~!」。従妹までもが「当たった~!」

 

 家族は帰り道をかなり歩いていたのだが、向こう側の街には普段は行かない。一行はお店に引き返して、当たったアイスをもらうことにした。

 新しいアイスを食べて帰る私達。しかし、私が棒を見ると「当たった!」兄が棒を見ると「当たった~!」従妹も「当たった~!」。

 まだ、幼稚園の従妹が言った「もう、食べたくない!」。確かに、私も兄貴も、もう、食べたくない。

 

 そんな空気を読めない父が言った。「店に戻るか!」。

 

 今回も、かなり歩いている。仕方なくもどって、アイスをもらった。みんな歩き過ぎてヘトヘトだ! 今回は、この場で当たりを確かめることにした。すると、兄「うわ~! 当たってる!」私「俺も当たってる!」従妹「うえ~ん! いやだ! 当たってる~!」泣き出してしまった。

 

 お店の人が驚いて「こんなに当たったのは初めてです。運が良いですね!」。

 私は言った「運良くないよ! うえ~ん!」私も涙目である。

 従妹がギャル曽根だったら良かったのに! と今の私は思う。

 

 次の瞬間。父が私に行った「お前が、アイスなんか欲しがるから、こんなことになるんだ!」。「ええ~! 俺のせいなの~? うえ~ん!」。すると従妹まで「そうよ! あんたのせいよ! うえ~ん!」。これは、理不尽である。

 

 流石は都鳥三兄弟の地元。アイス一つとっても気が抜けない。

 

 何故あの時、うちの家族は「当たり」を貰わないという選択ができなかったのだろう? なにも同じ店でなくても、「当たりの棒」を持って行けば、もう一本もらえたはずである。

 

 

 夏祭りには、人の思考回路を奪う不思議な魔力がある。今年は、夏祭りも中止だろうか? あの店は今もあるのだろうか? 同じ店で今一度アイスを買ってみたい気がする。

 

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