放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

新幹線で…(序章)

 三十年程前。私は毎週土曜日に名古屋・中京テレビで「5時SATマガジン」という番組の構成をしていた。

 当然、毎週、新幹線に乗るのだが、車内では色々なことがある。

 

 土曜の生放送。その後、会議を終えて他の作家と飲みに行くのが毎週の定番だった。

 ある時、朝まで盛り上がってしまい、二日酔いのまま帰りの新幹線へと向かった。

 

 指定席の窓口に並んでいると、何と! 世田谷の飲み屋で面識があった、中野督夫さんというミュージシャンが居るではないか。私は挨拶をして少し世間話をしながら窓口の列を待った。

 この中野さんは私が40を過ぎて初めてフォークギターを買った日に、経堂と豪徳寺の間にあった「月が出た」という飲み屋に行くと、そこに居た人。

 今日、買ったギターを見せると、手に取って

 「おお、エエナ! 三万ぐらいか?」

 「一万円です」

 「おお、初心者なら十分や」

 と、少し弾いてくれた。

 「よし、君、弾いてみろ! まず、E」

 

 飲み屋でギターレッスンが始まってしまった。いくつかのコードを教えると

 「よし、「黒の舟歌」弾いてみよう」

 

 何故? 「黒の舟歌」なのかは分からないが、初心者に弾きやすい曲らしい。

 ♪男と~女の~間には~! 

 「よし、隣のお姉ちゃんも弾いてみろ」

 「えっ! 私ですか?」

 酔っていたのか、別に来ている女性客にもギターを教えていた。

 

 

 一通り教えると中野さんはギターをなぜながら、真剣な顔で言った。

 「いいか、君! ギターが上手くなるコツは、まず、キダーと会話するんだ。ギターの木は元々生き物だからな。「お前はどこから来たんだい? よろしくな!」と、ギターと話すんだ。そうすると、上手くなるんだよ!」と言って店を去って行った。

 

 成程。プロは言うことが違う。私もギターを抱いてなでながら話してみた。「お前はどこから来たんだい? 中国産の安いギターだけど、素材は南方かな? これからよろしく!」

 その時、新しい女性客が入って来たが、険しい顔をして私とは最も遠い席に座った。ギターと話す危ない奴だと思われたようだ。

 

 ちなみに、この中野督夫さんを調べてみると、センチメンタル・シティーロマンスという伝説のバンドのヴォーカル・ギターで、その時はソロ活動をしていた。

 後に、WOWOWの放送で復活ライブの映像を見たことがある。薬師丸ひろ子の曲「セーラー服と機関銃」のエレキギターを弾いたのは中野さんである。

 

 私は春風亭一之輔のFМラジオ「サンデーフリッカーズ」(JFN)で、ディレクターの思い付きでギターと生歌を披露させられたことがある。この時、ギターを始めた為に、あの悲劇は起こったのだ。

 

 話は長くなったが、この後、中野さんと別れ新幹線に乗った私は、大変な事件に巻き込まれることになる。

 

 この話は、この後が面白いが、続きはまたの機会に…。講談風終わり方。

 

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