放送業界のお話と落研と私的な思い出

放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

桶田敬太郎君が突然⑧

 元・フォークダンスDE成子坂の桶田君から、電話があった。

 「小林さん、ネット番組出て下さい」

 「えっ! どういうこと?」

 

 聞くと、趣味でネット番組を作るというのだ。言うとおりにやるだけで良いというので、やることにした。何故なら私は「断らない男」だからだ。

 

 その時、敬太郎君は同じ物件の二つ隣に住んでいたので、すぐに家にやってきた。

台本には「使えるフランス語講座」と書かれている。

 「俺、何やるの?」

 「フランス語の講師、アジュール・米田です。メイクしましょう!」

 

 私は身を任せるしかなかった。敬太郎君は、真剣に「インパクトがないな~! こうしょうか? あっ! これこれ!」などと言いながら私にメイクしている。

 

 私はどうなっているのかまったく分からない。

 「できました!」

 鏡を見ると、まさに、コントに登場する変なオッサンの顔。怪しい講師である。

 「カツラはこれにしましょう」

 今度はナイロン製の顔がチクチクするセコイカツラをセットされた。典型的な安物コントの講師である。敬太郎君は私のクローゼットから背広と蝶ネクタイを選び、収録することになった。

 

 このコントは完全台本でアドリブは許されない。チョットした言葉も、自分の言い回しにすると直されるのだ。当時、私は四十過ぎだったと思うが、セリフが三行目から覚えられない。三行話すには暗記に五分はかかるのだ。普段の自分が言わない言い回しでの一語一句は本当に難しいものだ。俳優の皆さんの凄さが良く分かる瞬間だった。

 

 収録が始まった。

 「ボンジュ~ル! クロワッサーン! 「使えるフランス語講座」の時間がやってきました。講師のアジュール・米田です」

 

 とにかく言われた通り喋っていると、フランス語の所でカンペが出された。全部、本物のフランス語である。

 「これ、俺、読めないよ!」

 「ギャグですから、読めなくても雰囲気で読んで下さい」

 「ローマ字読みでいい!」

 「とりあえず、読んでみて」

 

 つまり、フランス語の講座なのに、講師が全然フランス語を話せないと言うギャグなのだ。これは、演技素人の私には難しい。

 ローマ字で読んでみると…

 「小林さん、今の、ローマ字そのまますぎるんで、もっと、メチャクチャに音外して読んで下さい」

 「えっ! そこはアドリブなんだ?…「スタジアムはどこですか?」はこうなります。ウディバカデシュ、ビジュビジ~!…」

 「う~ん! もっと自信もって、ウジバーシュデビジュみたいな感じで…」

 「ウディバーシュデビジュ…」

 「それを、もうチョット、威厳に満ちた感じで!」

 

 もう、私には何が何だか分からない。とにかく、数時間で撮り終わったのだが、私には達成感があり、言われた通りやる快感を覚えていた。

 

 チョット気になって聞いてみた。

 「これ、フランス語の分からない人がみたらギャグだと分かってもらえないんじゃないかな? 笑い声とかかぶせたらどう?」

 「いや! そこを説明しないのがオシャレなんですよ! コテコテにしたくないんです」

 

 流石は芸人時代、最先端の笑いを作っていた男である。感性が飛びぬけている。

 私はどちらかと言うと、昔ながらの感覚なのだろう。

 

 私はここちよい疲労感に酔っていると、敬太郎君は言った。

 「来週、「使えるドイツ語」と「つかえる中国語」を撮りましょう」

 「ええ~!」

 

 私は急に出演が忙しくなってしまった。

 

 ちなみに、このブログの私の写真はこの時の講師のメイクを敬太郎君が加工してTシャツにしたものである。

 

 数年後、敬太郎君が言った。

 「やっぱり、あのコント、笑い入れました! みんなギャグって分からないみたいです。ただ、アクセス数が多くて、本当にフランス語講座だと思って見てるみたいです」

 

 プレゼンが高度過ぎて、一般の方には分からなかった様だ。

 

 この「使えるフランス語講座」のことは、春風亭一之輔師匠には言っていない。もし、見たらバカにされるからだ。しかも、ラジオで言いかねない。

 あっ! アクセスの多い一之輔と繋がった!ハッシュタグ一之輔で発表しよう。

 

 この文章は一之輔師匠ラジオ「あなとハッピー」を聞きながら書いている。室長・増山アナが外に出て天気をレポートしている。ハプニングが面白い!

 

 最後に皆さん「サンデーフリッカーズ」(JFN)を宜しく!

 

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