放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

春風亭一之輔師匠と日芸落研と東海落研。チョットつながった!?

 二十年以上前のことだろうか? 関東の大学落研の大会が笹塚のライブハウスで行われた。私は、もう放送作家をしていたので学生ではないが、時間があったので十五年ぶりぐらいに後輩の活躍を観に行った。

 

 当時、私の卒業した東海大学落語研究部は廃部のピンチをやっと脱却したところで、かなりの低迷期で、まともに落語をできる奴は居ないと聞いていた。

 しかし、この大会の決勝に東海落研が二人、日芸落研が二人が進出。さらに、大喜利部門もあって、ここにも東海が出ているというのだ。

 

 観に行くと、東海の出場者は留年を何回もしている実質OB。日芸他の大学は三年生ぐらいの現役学生だった。「うちの後輩はなんて卑怯なんだ!」。

 私の知っている我が部の先輩は、この逆で、OBがしゃしゃり出て勝つのは「美学に反する」と思っていた。

 昭和54年、東海大学の二年生・頭下位切奴(現・昇太師匠)さんが二年生で「全日本学生落語名人位決定戦」で優勝した時、留年組には部の歴史に残る爆笑派のOBが数人在籍。さらに、四年生には頭下位亭獅子頭(現・柳家一九師匠)さんが居たのだ。

 一九師匠は昨年全国で二位になった人だが、四年生なので大手をふって出られる筈。しかし、後輩に譲るのが我が部の美学である。

 

 チョット、グチになってしまったが、「潰れそうだった部」が、決勝まで来たのだから、そこは、こらえて後輩を褒めて応援することにした。

 

 この大会は客席の投票で勝ち負けを決める方式でのトーナメント戦。運が左右するし優勝するには別の噺を二席はやらないといけない。かなりハードなものだった。

 

 この時、東海大で決勝に勝ち残った写亜(シャー・ガンダムの悪役の名らしい)君は、私の予想を覆すものだった。自作の新作落語で「ナンパ」などを題材にしていたことと、活舌が悪く何を話しているか分からないことだった。

 しかし、客席は大爆笑。観客がみんな応援している様に観えた。さらに、決勝には、もう一人東海の古典落語を普通にやる男と、日芸の学生が三人が進出した。

 

 私が一番衝撃を受けたのは、この時の日芸の学生である。予選で「つる」決勝で「野晒し」をやったが、ほとんどプロのレベルで上手いのだ。「何だ! こいつ! うちの後輩では絶対勝てないな!」これが、私の感想だった。

 しかし、客席投票の結果で優勝は「自作の新作落語」をやった、活舌が悪いうちの後輩・写亜君だった。実は私は後輩の応援に来たのに、日芸に一票入れてしまった。それほど、日芸は基本技術が高かったのだ。さらに、その後、の「大喜利部門」でも決勝は東海VS日芸。しかも東海が優勝してしまった。

 

 思いもよらぬ後輩の快進撃。OBとしては褒めないわけにはいかない。甲子園で桑田・清原のPLに勝った木内マジック・常総学院の様に輝いて見えた。

 

 「みんな、よくやったな! しかし、よく、あんなに上手い奴に勝てたな?」

 すると後輩が凄いことを言った。「組織票です。会場の客のほとんどが東海の友達なんです」

 「俺の褒め言葉を返せ!」

 どこまでも、卑怯な我が後輩だった。あきらかに日芸が上と思った私は正しかったのだ。

 

 この時、優勝した写亜君は現在の昔昔亭喜太郎である。最近、打ち上げで飲んだ時。喜太郎に「あの時の日芸の上手かった学生、何やってるんだ?」と聞いてみた。すると返事は「あの方は、小辰兄さんですよ!」。何と! 今の入船亭小辰だったのだ。

 

 小辰と言えば、前座名は「辰じん」。他大だが国学院落研で私より二つ後輩に居た、入船亭扇辰師匠の弟子だ。

 しかも、日芸では春風亭一之輔師匠と柳家わさび師匠の少し後輩となる。

 

 話は飛ぶが、一之輔のFМラジオ「サンデーフリッカーズ」(JFN)が始まる前。同じJFNのお正月特番で(確か三時間ぐらい)今ブームの落語を紹介する「落語の時間」という番組があった。その時、私は大学は違うが後輩の入船亭扇辰師匠をパーソナリティーに推薦したのだ。

 この番組の中で「師匠と弟子」をテーマにするコーナーがあった。そこに、出演したのが入りたての弟子「辰じん」(現・小辰)だった。私は顔を見ても、あの時の日芸の学生とは気づかず、ご祝儀を上げたのを憶えている。辰じん君、「師匠を別の有名人に例えると?」という質問に「加藤鷹(元AV男優)」と答えていた。

 こ番組は一回だけの特番だが、私としてはとても面白く、扇辰師匠の落ち着いた大人の喋りが気に入っていた。

 

 実は、このこともあって「サンデーフリッカーズ」の立ち上げの時、扇辰師匠をパーソナリティー候補にあげていたのだ(担当者から年齢制限が出てなくなった)。

 

 そして、喜太郎君は「笑点特大号」の若手大喜利に出演している。私の中でまた落研が繋がった。一之輔師匠、扇辰師匠、小辰さん、喜太郎君。

 

 ちなみに、一之輔師匠が「紀伊国屋寄席」で「麻のれん」をやるのを観たことがある。あまりに、扇辰師匠と似ていたので、聞いてみると「扇辰師匠に稽古して頂きました」との返事。また、繋がった。

 偶然だが私が一度だけ観に行ったことがある「NHKの新人落語コンテスト」に、小辰さんが出ていた。かなりの評価を得たが、優勝は桂三度さんだった。小辰君、学生時代から引き続き大会で運が無い人なのかも知れない。次は頑張って欲しいものだ。

 

 私のかってな夢だが、NHKの大会で、昇太師匠の弟子と扇辰師匠の弟子と一之輔師匠の弟子が闘う姿を観てみたい気がする。優勝は竹丸師匠の弟子だったりして…。そんな、世代を超えた芸の伝承と闘いにも魅力を感じる。

 

 なんだか、今回、無理やり色々とこじつけてしまいました。この文章!駄作!

 

 

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