放送業界のお話と落研と私的な思い出(瞳尻・黒舟)

「嗚呼!青春の大根梁山泊~東海大学・僕と落研の物語」スピンオフ・エッセイ。放送関係。業界のエピソードと近所の出来事

数年前放送された「落語者」という番組

 数年前、テレビ朝日で「落語者」という番組を構成した。この番組は二十分チョットの落語とトークの三十分番組。地上波民放では珍しい深夜番組だった。出演者の人選は真打以上で50歳代までの落語家さん。大大御所は除くという不思議な縛りがあった。

 

 落語家としては若い世代のお勧めの落語家さんを出すというものだ。この放送に、桃月庵白酒師匠が出演した時のこと。当時、白酒師匠はマスコミには知られていない存在だった。収録を終えて、編集をしていると落語初心者の技術さんがディレクターに言った。「この、白酒って人面白いね~!聞き入っちゃうよ!」。今まで何人もの凄い師匠を編集してきたのに、この人が「面白い」と言ったのは初めてなのだそうだ。

 

 この白酒師匠の放送があった直後。ある番組の打ち合わせで、落語に詳しくない放送作家のOTさんが「先週、放送した白酒って人、初めて見たけど、無名でもあんなに上手い人がいるんだね~!勉強になったよ!」と言ったのだ。

 

 その後、白酒師匠はみるみると頭角を現し、急速に落語界の人気者へと躍り出た。

 

 私は喜助時代に観て注目していたので推薦したのだが、まさか、落語を知らない人にこんなに評判が良いとは驚いた。案外、先入観の無いフラットな人の方が、将来のスターを見抜けるのかも知れない。